【読書】勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」「神域のプロゲーマー、ウメハラを作り上げた考え方 赤裸々に語るこれまでとメンタルの有り様」

【読書】勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」「神域のプロゲーマー、ウメハラを作り上げた考え方 赤裸々に語るこれまでとメンタルの有り様」

ウメハラこと梅原大吾氏著作 勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」を読了したので感想を上げる。

ウメハラとは

ウメハラについて一言で語るのは難しい。ウメハラは日本で最初のプロゲーマーであり格ゲー(格闘ゲーム)界のレジェンドとして有名だが、2019年現在その活動はゲーム以外にも多岐に渡る。
「勝ち続ける意志力」は2012年に刊行された。当時に比べるとPunk、ボンちゃん、ときどといったトップ層からはややポイントを開けられているものの、カプコンカップ等主要な大会には出場し続けており、現在の格闘ゲームシーンはウメハラを中心に動いている。

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2019年のウメハラの活動

直近でも、その活動は一括りには出来ないほど多様だ。2019年のウメハラの主な活動内容を挙げてみると以下の通りだ。

  • カプコンプロツアー(CPT)やストリートファイターリーグの参加などを初めとするプロゲーマー活動(CPTは975pでカプコンカップ出場を確定)
  • 個人の配信活動(DaigotheBeasTV)
  • 若手ゲーマー紹介
  • 企画配信(地雷ゲーム17歩など)
  • ウメハラジオ
  • 各種ゲーム普及活動(TEPPEN、ポケモンカード)
  • 著作執筆
  • 講演活動
  • 各社スポンサード活動(Cygames、RedBull、Twitch、HyperX、ジレット等)

地雷ゲーム17歩

【BeasTV】11/9/2019 17歩 : 8人シングルエリミネーション / 1-on-1 Mahjong Tournament

ウメハラとプロゲーマーたちが17歩で激突した企画。麻雀牌を使った1対1のギャンブルでトーナメント優勝を競う。
漫画『カイジ』に登場したギャンブル17歩のルールを元にウメハラが考案し、プロゲーマーや現役麻雀プロの白鳥翔氏を招待して優勝を争った。

プロゲーマーコラボと若手ゲーマー紹介

先日倉持由香と結婚を発表したプロゲーマー・ふ~ど氏とのコラボ配信や、若手の新進プロゲーマーや往年のベテランプレイヤーを招いての紹介企画「○○とは」シリーズも、業界の先駆者で絶大な人望と人脈を持つウメハラならではのプログラムといえるだろう。
【BeasTV】11/21/2019 レトロゲー特別配信!Retro Gaming with Fuudo & Friends!

【BeasTV】3/25/2019 カワノとは

現在「ストリートファイター」のプロゲーマーとしては最強の一人と目される東大卒プロゲーマー・ときど氏とウメハラの対決企画「獣道 弐」で負けたときどが「ゲームの中でくらいは勝ちたかった」と号泣したことは記憶に新しい。

雀荘時代からの盟友・ボンちゃん氏とは相互に互いの配信に登場する仲。
”2D神”こと古参トッププレイヤー・マゴ氏とときど氏によるTOPANGAや、ボンちゃん氏・ふ~ど氏による勝ちたがりTVにもゲスト出演する事もある。
ウメボントーク!Daigo & Bonchan Q&A Discussion (Part 1 of 6)

格ゲー界も世代交代を迎えており、ウメハラの世代は第一世代の格ゲーおじ(おじさん)世代として、まだ知名度の低い若手を一般向けに紹介する役割も担う。
一方でかつての強豪プレイヤーを配信に呼んで、昔話に花を咲かせて往年の格ゲーファンを喜ばせるのもウメハラだからこそ出来ることだ。

ウメハラ等「格ゲーおじ世代」と若手の代表格の関係は以下のようになる。

格ゲー界の主な「おじ世代」と若手選手(2019)

おじ世代 若手世代 関係
ウメハラ(38歳) カワノ(21歳) 師弟関係
マゴ、ときど(共に34歳) ガチくん(27歳) TOPANGA TVでのレギュラー
ネモ(34歳) 竹内ジョン(21歳) Team Liquid所属
ももち、藤村、ハイタニ(共に33歳) ジョニィ(21歳) 忍ism Gaming所属 藤村とジョニィは説教TVでも共演
板橋ザンギエフ(38歳) ナウマン(24歳) DetonatioN FIGHTING GAMES所属
sako(40歳) りゅうせい(25歳) FAV gaming所属
ふ~ど(34歳)、ボンちゃん(32歳) もけ(24歳) 勝ちたがりTVでのレギュラー

ウメハラとヒットボックス

2019年のウメハラのキーワードとしてはHB(ヒットボックス。レバーレスタイプのコントローラー)があった。
長年アーケード筐体でプレイしてきたウメハラは、家庭用ゲーム機に戦場が移ってからもアケコン(携帯用のレバー型コントローラー)でプレイしていた。レバー型アケコンはウメハラの使うコマンド入力型の技があるキャラクターに適している。

ウメハラはメインで使用するコマンド入力技キャラクターのリュウが仕様調整で苦戦する中、溜め技を主体とするガイルにキャラクターを変更。溜め技がより有利なHBにコントローラーを替えて更なる戦力アップを狙う。

プロゲーマー兼コントローラー製作者のガフロが自作したHB(ガフロコン)を入手し、様々なコマンドの短縮入力を開発した。

練度を上げたガフロコンでCombo Breaker 2019に出ようとしたが、直前で使用禁止が通告されたため、その大会は急遽通常のアケコンを使って事なきをえた。

その後、hitBOX社から大会で使用許可が出ているHBを提供され、HBで強くなる事をモチベーションに左手を訓練している。
この事は格ゲー大会のレギュレーションや持ち込みハードに関する規定の曖昧さについて物議を醸した。

ウメハラのキャラクター

性格はストイックでひたすらやり込んで腕を磨くタイプ。自ら不器用さを自覚していることで、毎日少しずつ強くなる、昨日より今日強くなることを是とする。

幼い頃から運動神経があり腕っ節も強かったが、青森から東京に転勤で引っ越したことで訛りなどから孤立しがちだった。現在でも人見知りな面がある。

酒とラーメンの食べ歩きが好き、散歩好き。
車に興味がなく、免許は取っていない。金が欲しいといった金銭欲も持っていないという。活動拠点は東京都内だが一定期間で引越しをしており、特に持ち家なども所有していない。

話好きで独特の考えと視点からくる一人話の面白さには定評がある。大変な漫画好きで相当数の漫画を読んでいる。好きなゲームと漫画について語るときはかなり熱くなる。

元々は寡黙でストイックなイメージがあったが、2016年ごろから個人配信で自ら企画して出演することで、従来のイメージを変えていった。

ゲームは格闘ゲーム以外のジャンルも好きで、主にプレイするジャンルはRPG。特にFF(ファイナルファンタジー)には一家言を持つ。

足が速く腕力も強いものの、スポーツはこれといった競技はしてこなかった。ダーツのプロになることも考えたが、日本でプロ競技として流行っていないことから止めたという。

格ゲー以外のジャンルでは麻雀の強豪としても知られる。3年ほど雀荘店員をしていた際に腕を磨き、プロ級の雀力を持ったが、麻雀は人から恨まれることもあることからプロになることはせず、介護の道に入ったため、ライセンス等は持っていないという。

麻雀の道でプロになれなかった自分に絶望したウメハラは、両親ともに医療の関係者で身近なイメージがあったことから介護の職に1年半従事した。

医療従事者として平凡だが満たされた日々を送っていたが、お世話する老人から若いうちにやりたいことをした方がいいという言葉に触発を受け、またストリートファイターの新作が出て友人に誘われてプレイし、改めて自分の格ゲーの抜きん出た力を認識してゲームを再開することを決めた。

当時プロゲーマーがまだ日本にいなかったためウメハラ自身は逡巡したものの、マネージャーからの強い後押しもあり、プロゲーマーとして活動を開始するのは2010年からである。

動画で見るウメハラ

ここでは動画で見られるウメハラを紹介していく。

格ゲープロゲーマーと動画配信の現在

筆者はストリートファイターシリーズ等の格ゲー経験者だが、現在では動画勢である。格ゲー動画勢には現在のYoutubeを初めとする配信環境は非常に有り難い。
というのも格ゲーを初めとするプロゲーマーが一斉に個人配信をしているからだ。
ウメハラもその一人で、Twitch グローバルアンバサダーとしてBeasTVという個人チャンネルを持っており様々な企画配信やプロゲーマーとのコラボ配信を行っている。
実際、大会で見る格ゲープレイヤーが、雑談や大会の裏話をしたり、格ゲーの研究や他のゲームをプレイする姿はこういう配信でしか見られない。
2019年現在で格ゲープロゲーマーの主な動画配信者は以下である。

  • DaigoTheBeasTV ウメハラ選手(ツイッチ)
    Twitch is the world's leading video platform and community for gamers.
  • 忍ismGaming ももち選手・ハイタニ選手・藤村選手・ジョニィ選手(Youtube)
    YouTube でお気に入りの動画や音楽を楽しみ、オリジナルのコンテンツをアップロードして友だちや家族、世界中の人たちと共有しましょう。
  • TOPANGA マゴ選手・ときど選手・ガチくん選手(OPENREC.tv)
    格闘ゲームを中心にイベントを開催しているTOPANGAの配信アカウント。毎週火曜日の21:00〜勝ちたがりTV毎週水曜日の21:00〜TOPANGATVを配信しております。イベントの開...
  • 勝ちたがりTV ボンちゃん選手・ふ~ど選手・もけ選手(OPENREC.tv)
    格闘ゲームを中心にイベントを開催しているTOPANGAの配信アカウント。毎週火曜日の21:00〜勝ちたがりTV毎週水曜日の21:00〜TOPANGATVを配信しております。イベントの開...
  • FAVGaming sako選手(ツイッチ)
    Twitch is the world's leading video platform and community for gamers.

本の内容について

ここまでウメハラの活動や動画などでキャラクターを見てきたが、本の内容について触れておく。

タイトルは世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」とあるが、「格闘ゲームを長期的にプレイして勝ち続けていくためにどのようなメンタルが必要か」を硬質な言葉で自省した内容が主になる。

格闘ゲームは通常3年から5年経つと次の新作ゲームが出るため、それまで築き上げたキャラクターや技の熟練度は全て白紙になり、一から積み上げることを要求される。(実際には、同じゲームでも数ヶ月から1年程度の間隔で細かい調整変更が入る。技やフレームの微調整、挙動の変更、追加キャラクターの導入などが行われた結果、キャラクターのランキング的な強弱も変わることが多い。)
そういった数年スパンで初期化される世界で勝ち続けるにはどのような考え方を持てばいいのか。それは勝負の世界での闘争とは逆のある種の境地ともいえる達観した考えだ。(本や読者の性質上、ビジネスでは~が該当するかもしれない、という書き方をしている箇所もある。)

プロゲーマーとしてのメンタルの持ち方が本の一つの柱だが、もう一つは幼少期からなぜゲーム好きになり、どのような家庭環境、学校環境で育って今のように一つのゲームを突き詰めるようになったのかも語られる。

数々の大会優勝、伝説的な逆転劇の数々、格ゲープロゲーマーという分野開拓やカリスマ的な存在になるまでの偉業を成し遂げてきたウメハラだが、本人は決して天才型ではなく、むしろ圧倒的な才能を有する優れた相手に凡庸な自分がいかに勝つかが自分の幼少期からのテーマと語る。それは、ウメハラの姉にある。

ウメハラの姉は器用で頭が良く、努力なしでも成果を挙げてしまうタイプだと弟のウメハラは語る。
ウメハラの姉は日本国憲法の前文を数回見ただけで完全に記憶するほどだった。

突出した才能の前には、凡人が多少の努力をした所で無意味に終わる。
幼少期のウメハラにはそれがトラウマになる。

姉との差を突きつけられたウメハラは、姉のような才能を持つ者に対して、いかに対抗するかがテーマになっていく。
それは格ゲーを極める過程でも中心に根付く考え方になる。

興味深いトピック

詳細は実際に購入して読んでもらいたい。

  • ウメハラが長期的に勝つために意識していること
  • ウメハラの幼少期から家族環境、学生時代、麻雀と介護からゲーム復帰に至るまでの経緯
  • ウメハラの普段の生活のルーティーン

読書に向いている人

  • 格ゲーをプレイしている人、格ゲーの動画勢
  • ウメハラに興味がある人、ウメハラが好きな人
  • ウメハラが麻雀や介護の道に入った理由を知りたい人
  • ギネスにも載っているレジェンドプロゲーマーのウメハラが普段考えて実践していることを知りたい人
  • ウメハラの普段の生活のルーティーンを知りたい人

読書に向いていない人

  • 格ゲーやプロゲーマーに興味がない人
  • ウメハラが実践している格ゲーのテクニックについて詳しく知りたい人(本書は幅広い読者を対象にしているため、ゲームのテクニック面で語られている内容はない)
  • eSportsについて詳しく知りたい人(本書は2012年刊行なのでまだ日本でeSportsが話題になる前であり、eSportsに関連する話題はない)
  • 面白おかしいエピソードを読みたい人(ウメハラは配信で話す昔のエピソードは面白いものばかりだが、本書ではそうしたエピソードは語られていない)

終わりに

ウメハラはプロゲーマーとしてビートたけしや松本人志に例えられることもある稀有な存在だ。格ゲー界へは無論、一般社会への知名度や影響力も大きい。
日本でも日本eスポーツ連合(JeSU)というライセンス団体が発足し、eSportsという言葉が連日メディアに取り沙汰されるようになった。

ウメハラがプロゲーマーに成った2010年から確実にゲームは世間で認められる存在になりつつある。ウメハラが希求した世界が実現しつつある。
こうした中で今後ゲーム業界や一般社会がどう変わっていくのか?
それを読み解く上でも絶好の本だと言えるだろう。

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