世界樹の迷宮V 長き神話の果てゲームレビュー「新規システムが多数も空振り気味、ストーリーも薄めで印象に残らない」【3DS】

世界樹の迷宮V 長き神話の果てゲームレビュー「新規システムが多数も空振り気味、ストーリーも薄めで印象に残らない」【3DS】

『世界樹の迷宮V 長き神話の果て』(3DS版)表ストーリークリア後の総評とレビュースコアを掲載します。
※パッケージ購入価格は2,295円。
※ストーリーは表ストーリー(難易度ADVANCED)のみクリア。

世界樹の迷宮V PV#01

SPONSORED LINK

レビュースコア

ゲームタイトル スコア ランク 評価観点
世界樹の迷宮V 長き神話の果て
6/10 C
  • メカニクス(アクション・操作性・戦闘)
    7/10
  • 世界観・ストーリー・登場人物
    2/10
  • グラフィック・モデリング・画面UI
    5/10
  • サウンド・BGM・音響効果
    8/10
  • インプレッション・熱中出来る要素
    2/10
  • クオリティ(プレイアビリティ・バグ・ロード時間 etc)
    5/10
[寸評]
世界樹の迷宮V 長き神話の果て(以下、世界樹の迷宮V )は世界樹の迷宮シリーズのナンバリング5作目の作品。
多数の新規システムが導入され一新された感があるものの、食材システムなど仕様が十分考慮されておらず、上手くいっていないものが随所に散見される。
ダンジョンは1階層目は、ダンジョンのギミックや迷宮で出会う人々との会話、アドベンチャーエピソードも多く、探索し甲斐があるのだが、階層が上がると徐々にギミック・NPC・アドベンチャーエピソードが少なくなっていき、寂しいものになる。製作者のやる気がどんどん薄れていくような気がしてやるせなかった。
ストーリーも非常に薄いもので、どんな内容だったか思い出せない。裏ボス関連のストーリーも取って付けたような内容だった。
ただ、裏ボスまでに攻略する必要がある最終ダンジョンはギミックが満載で、非常に作り込みがされており、難易度も高い。最終ダンジョン自体は良く出来ていると感じた。
裏ボスは対戦において運要素が大きく、これといった攻略パターンが通じない非常にいやらしいボスになっていて、攻略を考えたり戦っていても面白くないボスだった。
自分のモチベーションが持たなかったのは裏ボス戦がつまらなかったのもあるだろう。
総評としては、世界樹の迷宮シリーズの中では非常に薄味で、ストーリーはないに等しく、新規システムは一見力が入っているものの空回りした印象が強く、評価としては凡作寄りの「普通」という所だろう。
本レビューでは、点数はやや甘めに付けて6点としたが、一応世界樹シリーズということで、他の5点レビューのゲームと差を付けるために6点にした。
実際の出来は良くて5.5点程度である。
  • ジャンル:ダンジョンRPG
  • プレイ人数:シングル
  • プラットフォーム:Nintendo 3DS
  • 発売日:2016年8月4日
  • 開発・販売:アトラス

レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。

総評

世界樹の迷宮V PV#02

ゲームの特徴
今作はプレイアビリティがかなり高く、遊びやすさでいうとシリーズトップクラスであるものの、システム面ではかなりバランスの悪い作品である。
要はシステム面の練りこみ不足が目立つ。
一例を挙げると、食材を調理するシステムの問題がある。

食材システムの問題

簡単に食材システムの仕様を述べると以下のようになっている。

  • 迷宮内に調理可能な薬草や鶏などが落ちているので採集すると食材として入手。
  • 一部の食材はBARでも購入が可能。
  • 食材は迷宮内にあるたき火ポイントでデザート・料理・焼くなどのメニューで調理が可能。
  • 調理した食材は迷宮内で使うとHPやTPが回復などの効果が得られる。

第一階層では鶏を探すなど食材に関連したイベントもあり、きちんとしたシステムになっているのかと思ったが、実際にはかなり杜撰な作りで、「新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女」で実装され、評判の極めて悪かった「グリモア」を思い起こさせるものだった。

食材システム(料理)の問題点

  • アイテムのメニュー内でソート(並び替え)出来ず(恐らく入手順表示?)でばらばらに表示される。
  • 食材は一切売る事が出来ず食べない場合は捨てるしかない。
  • 料理に必要な食材を町で購入出来ないため、レシピにない食材は一々迷宮に取りに行かないと入手出来ない。例えばマンドラジャガは迷宮に大量に落ちているが、ミルクがないとレシピの調理が出来ない。が、ミルクの入手手段は限られているため、マンドラジャガが大量に余りミルクが全くないなどの状況になる。特殊な素材ならともかく何故ミルクを街の店で調達出来ないのだろうか。一応宿屋で定期的に無料でくれるのだが、それを待たないといけないのもどうなのか。
  • 食材の料理やデザートでHPやTP回復、戦闘不能回復などが出来るが、このためメディカやアムリタなどの世界樹での定番の回復アイテムの存在が薄くなっている。入手が容易な食材の料理は大量に余るため、迷宮内で長期探索が可能とは言え、緊迫感が薄れる原因になっている。
  • 「新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士」では、料理を開発するときちんとグラフィックで表示され、パーティーメンバーのリアクションも描写されたが、本作では料理を作ってもグラフィックもなければ、メンバーのリアクションも一切描写がないと寂しい仕様になっている。
  • 食材を宿屋に預ける事が出来ず、全て持ち歩くしかない。食材システムに主に上記のような問題があり、特に序盤は動物を探すイベント等で力が入っていたと思われるものの、結局は杜撰な作りに終止し、本作のシステムの中でも特に浮いてしまう事になった。
  • ストーリーの薄さもそうだが、「3DSのゲームだからこの程度で十分だろう」という、開発側の思惑が透けて見える。
    そういったものは、全てプレイしているプレイヤーには筒抜けだという事を、製作者は理解して貰いたい。

    もし食材システムを改善するとしたら、自分の一案では、以下になるだろうか。

    • 食材をソートによる並び替え可能にする。
    • 迷宮のたき火ポイント以外でも調理可能にする。例えば宿屋でも調理が出来るようにする。
    • 種族で調理スキルを設けて上手く料理出来たら何らかのメリットがあるようにする。
    • 食材は宿屋やBARで売り買いが可能にする。
    • 定期的に町にレア食材を売りに来る商人がいるようにしても面白い。
    • 食材のレシピメニューを作ってどの食材が調理に必要か分かるようにする。
    • 料理は一度迷宮で食べて効果を得た場合、一定時間以上(8時間以上など)経過しないと、食べても効果が出ないようにする。(世界樹の迷宮は時間経過があるため一定時間後に食べられるようにするなどのシステムは問題なく可能である。)これならメディカやアムリタなどの価値が喪われず、食材との差別化が出来る。
    • 料理を作ったらグラフィックを表示しメンバーのリアクション描写も入れる。
    • 迷宮内での料理はたき火キットが必要とする。たき火キットは町で購入するか、種族スキルで作成が可能にする。
    • 世界樹の迷宮Vの難易度について

      本作は、「難易度がシリーズで一番易しい」と言われているが、絶対にそんな事はない。
      特にクリア後要素の最終ダンジョンはアトラス作品の中でもトップクラスに難易度が高い。
      個人的に「真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY」のダンジョン「嘆きの胎」は非常に難易度が高いダンジョンだと思ったが、本作の最終ダンジョンの構成やギミックのえげつなさは嘆きの胎以上のものに感じた。

      難易度が簡単なイメージがあるのは、強力なユニオンスキルが特別な事をしなくてもスキルポイント消費で取れる点で、これは『世界樹の迷宮III 星海の来訪者』で言うと、「大航海を一切しなくてもリミットスキルを全て持っている」という感じに近い。

      また、世界樹の迷宮は中盤以降TP回復アイテムが店売りされるが、それまではTP回復手段に乏しく、TPを如何にやり繰りするかというのが序盤の難易度につながっていたが、本作では食料でTPが補充出来る点も従来の世界樹の迷宮に無かった仕様になっている。
      そのため、迷宮内でTPが尽きる心配がほぼないため、他シリーズに比べて探索が比較的容易という事は言える。
      「ヒギエイアの杯」「イージスの盾」等一部のユニオンスキルが強力過ぎるため、そう思われても仕方のない部分はある。

      裏ボス(ボス名については伏せる)については、レベルを上げれば勝てるというものでもなく、「これをやれば勝てる」という絶対的な戦術もなく、封じがいつ解除されるかだったり、運要素が絡むため、自分は苦手なボスだった。
      裏ボスが倒せないままレビューを上げるのは屈辱的だったが、もうプレイするモチベーションが残っていないため、いつまでもレビュー草稿を腐らせていても意味が無いと思った事もあり、レビューを上げる事にした。

      新システムの召喚について

      新システムである「召喚」として、これまではNPCが臨時で手助けしたり、シノビの分身などでパーティーに召喚専用の枠が「1枠分」はあったが、今作では専用の召喚モンスター・ペット枠が3枠分用意される。
      召喚可能な職はネクロマンサー・ハウンド・ドラグーンの3職である。

      ネクロマンサーは死霊、ハウンドは鷹と猟犬、ドラグーンは遮蔽物を召喚して様々な用途に使える。
      召喚職を複数入れる場合、限られた召喚枠の取り合いになるため運用が難しく、試行錯誤が必要なものになっている。

      世界樹の迷宮シリーズと各作品の特徴

      世界樹の迷宮シリーズは2018年の「世界樹の迷宮クロス(X)」以降途絶えたかに見えたが、アトラスは2023年にスイッチやSteam等の各ハードで「世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER」を発売。
      新作ではなくリメイクだったものの、3DSによる2画面がプレイ出来なくなったハードの制約の中で世界樹の存続を模索する試みとして、評価出来ると言える。
      特にPCのSteamに展開したのは素晴らしい。

      アトラスは近年、積極的にIPタイトルをSteamに移行・移植しており、その流れが世界樹シリーズにも適用された格好だ。
      今後はスイッチやSteam等に世界樹の迷宮の完全新作タイトルが発売される事を大いに期待して締めくくりとしたい。

      以下は、2023年現在まで発売された世界樹の迷宮シリーズである。
      3DSさえ入手できれば今からでも遊べる作品が大半であるし、ニンテンドースイッチかPCしかなくても、「世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER」が遊べるので、是非参考にしてプレイして見て欲しい。

      タイトル 発売 機種 特徴
      世界樹の迷宮 2007年1月18日 DS 第一作。現代版ウィザードリィがコンセプト。ゲームブック風のテキスト、古代祐三氏作曲のBGM、クラス制、スキルツリー、ダンジョンマップ作成、封じ、F.O.Eなど基本システムはシリーズ作に踏襲された。
      世界樹の迷宮II 諸王の聖杯 2008年2月21日 DS 二作目。一作目の人気を受けて作られた続編。高難易度で知られた。
      世界樹の迷宮III 星海の来訪者 2010年4月1日 DS 三作目。DS最終作。サブクラス、鍛冶、マルチエンディングと周回制、大航海など新規システムが導入。戦闘のテンポアップ。
      世界樹の迷宮IV 伝承の巨神 2012年7月5日 3DS 四作目。この作品から3DSに移行。稀少個体、敵の隊列概念、気球艇での大地探索、小迷宮が導入。難易度選択追加。
      新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 2013年6月27日 3DS 一作目のリメイク。ストーリーモード導入、倍速移動・戦闘、フロアジャンプ、ギルドハウス、漢字使用可などプレイアビリティが大きく向上。ボイス・ムービーによる演出強化。グリモアは賛否。
      新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士 2014年11月27日 3DS 二作目のリメイク。ミレニアムの少女を継承し評判の悪い部分を改善。特にグリモア周辺のシステム整備とUIが大幅改善。職業数を新1の11から15へと増加。セーブ数を新1の1枠から9枠へ増加。公国直営料理店運営(料理メニュー開発、宣伝計画、都市開発)。敵ステータス表示。DLC発売初。
      世界樹の迷宮V 長き神話の果て 2016年8月4日 3DS 五作目。キャラクターメイクに種族が追加。二つ名や召喚を導入。UIが大幅に変更。
      世界樹の迷宮X(クロス) 2018年8月2日 3DS 六作目。シリーズ最終作。職業数と迷宮数は過去最多。詳細なキャラクターメイク。
      世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER 2023年6月1日 Nintendo Switch,Steam 第1作から第3作までをHDリマスター化してリブート。プラットフォームはSwitchとSteamで発売される。DSの上下2画面を活かしたシステムだったマップの手描きも再現されている。

      その他の評価点

      高評価の項目 低評価の項目
      • プレイアビリティが非常に高い。ダッシュ移動、高速戦闘、敵のステータス・弱点等も全て見られるためデバフ職にメリットが大きい。
      • UIが別ゲーともいえるほど劇的に進化を遂げた。マップアイコンも増えてマップが描きやすくなった。
      • 迷宮内のボリュームが豊富。隠しエリアや表ストーリークリア後のクエスト、ダンジョン等も含めるとゲームのボリュームはかなりの容量がある。
      • 迷宮の各階層のギミックが多彩。階層が変わる度に異なるギミックの攻略に頭を使わせられる。特にクリア後要素はシリーズでもトップクラスの「嫌らしさ」でよくこんな構造のダンジョンを作ったと感心する。
      • 迷宮内で遭遇するアドベンチャーエピソードで経験が入るようになった。
      • これまでも鍛冶システムはあったが、本作では装備品を分解してリサイクルが可能になった。
      • 種族をシリーズ初導入。種族専用(ユニオン)スキルもある。ゲージを使ったスキルとしてユニオンスキルシステムを導入。
      • 迷宮の釣りポイントで釣りが可能になった。釣った魚は食材に出来る。
      • 食材とレシピを用意して料理を作る事が可能。冒険中に料理を食べる事でHPやTP回復が出来る。特に序盤はTP回復アイテムが高価なため、TPの運用が楽になった。後半も食材のごり押しで迷宮を突破するなどのパワープレイも可能になった。
      • キャラメイクが充実している。さすがに顔の造形などは選べないが、髪色、目色、肌色、ボイス等を選べる。キャラメイクの仕様はシリーズ最後のX(クロス)にも引き継がれた。
      • 職業は10職とシリーズに比較すると少ないが、完全な死に職がほぼなく、どの職でも活躍の機会がある。
      • 「戦乱 吹き荒ぶ熱風の果て」を始めとする古代祐三氏作曲のBGMが秀逸。
      • 序盤で入手するアクセサリ「追憶の音貝」の装備により、ダンジョン出撃メンバー以外にも経験が入るため、取りあえずキャラを作っておけば勝手にレベルが上がってくれる。中盤以降のキャラ作成が比較的楽になっている。
      • 今作で新規に導入されたシステム(食材関連など)が上手くシステムに組み込めておらず、問題点が多い。
      • 有料DLC商法。特に経験稼ぎを楽にDLCでさせるのはやはり抵抗がある。
      • 職業が10職と他のシリーズに比べて少なめ。
      • 迷宮内で起きたイベントがアドベンチャーエピソードとして語られ、冒険感がある。ただ、エピソードが発生すると毎回経験リザルト画面を表示しテンポが悪いため、アドベンチャーエピソードでの経験入手は不要だったかもしれない。アドベンチャーエピソードが前半は多いが、後半に行くほど少なくなる。
      • 累積耐性があるにも関わらず、体感上、敵は状態異常を何度も成功させて来るため理不尽な仕様を感じる。(累積耐性は、一度何らかの状態異常や封じ状態にかかると、2回目以降は同じ状態異常や封じが成功し難くなるシステム。)
      • 本作からキャラメイクに「種族」が導入され、ユニオンスキル等に関連する新システムが追加されたものの、ストーリー面では、種族をテーマにしたエピソードはない。結局、次のクロス(X)では、従来通り種族の設定はなくなった。(アイオリスの大市の店主セリク等、種族に関係した台詞を話すNPCはいる。)
      • 一部のユニオンスキル(種族専用のスキル)が強力過ぎる。(特に「ヒギエイアの杯」など)
      • 裏ボス関連に問題が多い。裏ボス戦が運要素が大きく面白くない。またストーリー面では、裏ボス関連のキャラクターが唐突に登場し、ストーリー面で非常に印象が薄い。

      職業とサブクラスについての考察

      以下リンク先にて職業やパーティー構成ついて考察を述べています。

世界樹の迷宮V 長き神話の果てカテゴリの最新記事