メイドインアビス 闇を目指した連星 ゲームレビュー「度し難いほど苦行に満ちているが爆発的な昂ぶりを感じられる稀有なゲーム」

メイドインアビス 闇を目指した連星 ゲームレビュー「度し難いほど苦行に満ちているが爆発的な昂ぶりを感じられる稀有なゲーム」

『メイドインアビス 闇を目指した連星』(PS4版)DEEP IN ABYSS モードクリア後の総評とレビュースコアを掲載します。
※購入価格は1,980円(75%オフ)。

PV 『メイドインアビス 闇を目指した連星』アナウンストレーラー

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レビュースコア

ゲームタイトル スコア ランク 評価観点
メイドインアビス 闇を目指した連星 6/10 C
  • メカニクス(アクション・操作性・戦闘)
    5/10
  • 世界観・ストーリー・登場人物
    10/10
  • グラフィック・モデリング・画面UI
    4/10
  • サウンド・BGM・音響効果
    7/10
  • インプレッション・熱中出来る要素
    8/10
  • クオリティ(プレイアビリティ・バグ・ロード時間 etc)
    2/10
[寸評]

総じて、プレイアビリティの低いゲーム性、重量や武器耐久などの厳しい制限の中、無限沸きする原生生物や上昇負荷の時間待ちでイライラさせられ続ける。
度し難い程に苦行に満ちたゲームである。
プレイが快適になるのは黒笛以降だがその頃はほぼクリア目前になっているため、プレイ時間の大半は苦悩に満ちた時間を過ごす事になる。
但し、困難な状況を打破して街に戻った時や、クエストを達成した時はこの上ない感情の昂ぶりを感じられる。
  • ジャンル:度し難いアクションRPG
  • プレイ人数:シングル
  • プラットフォーム:Nintendo Switch,PlayStation 4,Windows(Steam)
  • 発売日:2022年9月2日
  • 開発:Chime Corporation
  • 販売:スパイク・チュンソフト

レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。

総評

PV 『メイドインアビス 闇を目指した連星』システム紹介トレーラー 探索編

つくしあきひと原作の「メイドインアビス」は説明不要の人気漫画で、筆者もアニメ1期を見て余りのインパクトに忘れられないアニメとなった。
漫画も全巻購入しているが、怖くてまだ未読である。

メイドインアビスの世界観はリアル寄りのファンタジー世界で、孤島に広がる大穴「アビス」が舞台となる。
アビスの底は深く、未だ解明されていない未知の世界となる。
アビスには遺物という人工物が眠っており、これらのオーパーツ的なお宝を探すべく、その深層に潜る「探窟家」という職業が人々の英雄的な存在となっている。
孤児院のリコもその一人だったが、ある日生還した探索隊が持ち帰ったリコの母親・ライザからの手紙を読み、ライザに会うため謎のロボットであるレグの助けを借り、アビスの底を目指して旅立つ、というのが序盤のストーリーになっている。

原作の絵柄は非常に可愛い感じだが、内容は非常にグロテスクである。
アビスから地上に上がる時に「上昇負荷」という一種の呪いが発動し、一層から地上に戻る程度なら軽い目眩で済むのだが、二層以降は吐瀉物を吐く、幻覚、全身の激痛、人間性喪失や死といった重い症状が現れるという設定がある。
上昇負荷を避けるために様々な非人道的なやり方が考案され、その様子が容赦なく描写されるため、目を背けずに見るのに覚悟が必要な作品である。

また、アビスでは危険な原生生物が闊歩しており、そこは正に弱肉強食の世界であり、当然そこに分け入って行く人間には相応の危険や死が伴う。
ロボットであるレグはともかく、人間(?)であるリコにもそれは避けられない。

このようなアビスを中心とした際どい描写のある世界観だが、スパイク・チュンソフトにより「度し難いアクションゲーム」としてCERO:Z指定(18才以上のみ対象) でゲーム化がされた。
特にPVが発表された時には、アビスでどのような度し難い死に様が再現されているのかを中心にファンの話題となっていた。
ゲームにおいても、アビスの上昇負荷の描写や原作登場キャラが多数登場、原生生物に殺されて死亡した時の様々なグロ描写が再現されており、その点ではかなり健闘している作品と言える。

が、肝心のゲームシステムは、アビスを再現するためとは言え全体にプレイアビリティが低く、またプレイヤーをイライラさせる要素だけは抜かりなく実装されており、メイドインアビスという世界に飛び込んでいるとはいえ、もう少しゲームの調整としてどうにかならなかったのかと思う部分が多い。
折角の人気原作のゲーム化なのだから、時間を掛けて丁寧に作ってもらえたらと思わずにはいられなかった。
実際ゲームが発売された時には、発表から発売まで余り時間を掛けずに作っている感があり、嫌な予感がしたが、やはりゲームの出来としてはそこまで良いものにはならなかった。
逆に言うと、ゲームの企画・設計段階としては良いアプローチをしていると思うが、余り良い評価が得られなかったのはゲームのプログラムや実装以降のフェーズが悪かったのではと思う。
時間と予算を掛けて丁寧に作られた感じが余りしない。

PV 『メイドインアビス 闇を目指した連星』システム紹介トレーラー 成長編

プレイアビリティの低さとしては、以下が挙げられる。

アイテムリングの操作性の悪さ

アイテムリングというUIにアイテムを8個まで設定出来、食料を食べたり武器を振るうためにも一旦リングに装備する必要がある。リングには空きがあると調理前の肉などそのままでは持っていて意味がないアイテムも強制的に設定されてしまい、非常に煩雑。
アイテムを使う(武器を振るう・料理を食べるなど)には、アイテムリングに設定する⇒アイテムリングで該当の方向にキーを合わせる⇒アイテムによって異なるボタンでアイテムを使う、という段階が必要になる。
特にアイテムリングで該当の方向(角度)にキーを合わせるのが自分は苦手で、斜め45度下と右や下がきちんと角度が合わず、慣れるまで何度も失敗していた。
武器は武器スロット、料理は料理スロットなどに設定して上下キーだけで該当アイテムに合わせて使用する方式には出来なかったのだろうか。(ダクソやブラッドボーンのような操作方式である)
また、オーゼン戦などであるのが、戦闘前にムービーが入るが、ムービー前にアイテムリングで武器に合わせる⇒ムービー⇒戦闘開始⇒何故かアイテムリングが武器にセットされていない(初期化されている?)状態になり、再度アイテムリングを武器に合わせる必要がある、という事があり、戦闘開始後に無駄な操作が発生する事になっていた。

採掘の角度がシビア

崖の途中に岩や遺物が生えており採掘出来るのだが、採掘の時の判定角度がシビアで、自キャラから左上などにないと採掘判定にならない。
明らかに見た目で届いていても、ボタンを押しても採掘判定外と判定されると採掘が出来ない。

原生生物の解析の度し難い仕様

双眼鏡などで原生生物を一定時間見ると解析がされて図鑑に記録出来るのだが、10数秒生物を視界に捉え続けないとならない。
視界から外れると解析ゲージが下がっていき、最終的に初期化されてしまう。
特に自キャラの周囲にリスポーンし続ける小さい生物の場合、双眼鏡などで視界に入れ続けるのは至難の業であり、あっという間に解析ゲージがなくなってしまう。
せめて、解析ゲージを減らないようにしたり、減りをスキルなどで遅くするなどの処置をして欲しかった。

上昇負荷がただ時間を待つだけの罰ゲーム

アビスの象徴である上昇負荷の再現のため、一定時間上り続けると紫のエフェクトが発生してそれでも上がると自キャラが吐いたり幻覚を見る描写と、体力と満腹ゲージが大幅に減るデバフが入るのだが、これを避けるには一旦上がるのを辞め、停止するだけで済む。
そのため、三層などの崖上りが連続する厳しい状況を除けば、上昇負荷が過ぎ去るのをただ待つというプレイヤーに苦痛を強いるだけの罰ゲームになっている。

原生生物の無限沸きとワープ

エリアに入ると一定時間経過して原生生物が沸き始めるのだが、倒しても無限に沸き続けるので、倒すのはほぼ無駄に終わる。
おまけに、武器は(黒笛以降を除けば)直ぐ壊れるため、無限に生物を倒す事は出来ない。
逃げても原生生物はワープして即追い付いてくるため、絶対に引き離せない。
特に、崖を上っている時に沸いてきて、攻撃するとスタミナを消費させられ、崖から転落死になり易いので、非常に鬱陶しい。

所持重量の少なさ

とにかくリュックの所持重量が少なく、スキルで増やすしかないのだが、黒笛になるまではスキルで解放しても僅かな量しか持ち運べない。
そのため、大半は武器と食料でいっぱいになり、現地で採掘した遺物などはほとんど持ち帰れない。
そのため、ゲームの9割程度を占めるだろう赤笛から月笛の間は所持重量の少なさに苦悩しながらゲームをする事になる。

武器が直ぐに壊れる

武器には耐久値があり、使用する毎に耐久が減って耐久がなくなると壊れる。
町に戻ると耐久が全回復するのだが、アビス内で武器なしにならないように、武器を数本は持ち運ぶ事になる。
しかし、武器を大量に持って行くとリュックの重量が頭打ちになるので、武器を絞って現地でクラフトする等、厳しい運用を迫られる。

塩がないと詰み

満腹ゲージがなくなるとスタミナが回復しない、攻撃出来ない、エリア移動ポイントで移動出来ないなど、詰みに近い状態になる。
(原生生物を攻撃して素材を得て料理を作るにも、攻撃するためのスタミナが必須のため、「料理なし・満腹ゲージゼロ」では詰みとなる)
料理を食べて満腹ゲージを回復させながらゲームを進める事になる。
そのため、アビスには潜る層の深さに応じて料理(または調理前の肉などの材料や調味料)を持参する事になる。
持参した料理が尽きたら、アビス内で原生生物を狩りしてそれを調理する事で料理に出来る。
アビスでの料理クラフトには塩が必須(塩が必要ない料理もあるが、満腹ゲージが回復しない)で、レシピと塩があれば生物を狩って何らかの料理は作れるのだが、塩自体はアビスで取れないので、塩がないと詰みというのはこのゲームではよく言われる。
自分はアビスに行く時は塩は100以上持って行っていた。

行きのギミックが帰りで使えない

行きで使ったロープが帰りのルートでなくなっている、行きで動かしたギミックが帰りではそこまでのルートが閉ざされていて別ルートを選ばざるを得ない、という事がよく起こる。
そういうものだと分かっていれば対応出来るが、アビス内でそれに気付いた場合、それまでの数時間以上のプレイ時間があっという間に無に帰す事があり、その時は非常に辛い。
(救済措置としては、詰み状況になったら「リタイア」を選べる。リタイアするとアビスで入手した物はなくなるが、アビスで使った物はなかった事になり、全て戻ってくる)

つまらないQTEの強制

一部の原生生物やボス戦闘では、止めを刺す時に一定時間にランダムで表示されたボタンを押したり、ボタンを連打するというQTE(ミニゲーム)が展開され、失敗するとまた攻撃する必要が生じる。
そのため、○○匹原生生物を狩って来る系のクエストでは、その回数分QTEをやらなければならないため、非常に苦痛である。

他にも、アビスで同行するNPCが、少ないパターンの台詞を延々と叫び続けたり、自分から敵に突っ込んで行ってHPを失ったり、同じ場所でカクカクし続ける等おかしな動作をする事が頻繁にあり動作不安定な部分が多い。

一般向けではないが、このゲームでしか得られない感情の昂ぶりがあるかも

全体に厳しい内容を書いたが、深界三層で帰路のルートが分からず、リアル時間でアビス内部を4時間以上も右往左往し、奇跡的に帰路が見つかり街に帰り着いた時の安堵感は、普通のゲームでは得られない感情の昂ぶりを感じられた。
決して一般向けとは言えないこのゲームだが、その点では個人的にはこのゲームは楽しめた方なのかもしれないとも思う。

『メイドインアビス 闇を目指した連星』オープニングムービー「憧れに捧ぐ花」

ゲーム中のスクショ集

大木を伝って移動したいが・・・

ピッケルのクラフト画面だが材料が足りない

アビスからの絶景

遺構の内部は見るからに複雑な構造

寝ているタチカナタに攻撃を仕掛けるか?

幻想的な風景の池で魚釣り

伝報船で手動セーブ

積雪地帯の岸壁の昇降

アビスの上昇負荷による幻覚

白笛の不動卿オーゼンと対峙

その他の評価点

高評価の項目 低評価の項目
  • キャラクリエイトしたオリジナルキャラでアビスに挑める。(DEEP IN ABYSSモード)
  • リコ、レグを始めオーゼン、ハボルグ、マルルク、ナナチ、ボンドルド等原作キャラが多数登場する。
  • オリジナルストーリーだが、原作の設定を活かしてメイドインアビスらしいストーリーになっている。
  • 移動や戦闘はダッシュ・近接攻撃(ピッケル・ナタ)・遠距離攻撃(弓・銃)・ローリング回避等があり、思っていたよりも本格的な実装。矢や弾がなくなると弓や銃は使えない。
  • 自キャラの部位破壊(手足)や毒デバフ3種類もあり、敵にも毒攻撃で動きを止める事が出来、デバフについては豊富である。
  • 崖の登攀やルート構築が面白く、筆者はこのゲームは「ルート構築兼リソース管理ゲー」だと思っている。
  • 死亡時のグロ再現に力が入っている。
  • (仕様に問題はあるが)原作の上昇負荷を再現している。
  • 塩やロープがない、帰路ルートが分からない等で詰み状況になり易いが、「リタイア」を選ぶ事で行く前の状況に戻れる。
  • ファストトラベルで既に踏破した階層はスキップ出来るのはこのゲームで数少ない良心的な部分。
  • アビスの雰囲気はそれなりに再現されている。(特に深界一層と三層)
  • 手動セーブが原作にも登場するアイテムの「伝報船」を使うというアイデアは良かった。空が開けている場所でないと伝報船が使えないというのも、プレイヤーとしては厳しいが、アイテムの特性上仕方ないと思える。
  • 声優陣の演技は素晴らしい。
  • ゲーム用のオリジナルOP曲「憧れに捧ぐ花」、ED曲「灯火」が良い。
  • HELLO ABYSSモードとDEEP IN ABYSSモードがあるが、HELLO ABYSSモードは(原作序盤を再現とは言え)数時間で終了するチュートリアル的な内容で物足りない。HELLO ABYSSモードはなくても良かったと感じる。
  • アイテムリングが使い難い。
  • 採掘の判定がシビア。
  • 原生生物の解析ゲージが減る仕様。
  • 上昇負荷が時間を経過するのをただ待つだけの罰ゲーム。
  • 原生生物が嫌がらせのように無限沸きして付きまとい続ける。
  • 所持重量が非常に少ない。スキルで重量制限を解放出来るが、黒笛までは重量が少なく、遺物を持ち帰るのに苦労する。
  • 武器に耐久値があり、特に序盤では数回使っただけで壊れる。
  • 料理のクラフトに塩が必須で、なくなるとアビス内での料理クラフトが出来ず詰み状況になり易い。
  • 料理に塩が必須だが水分補給が一切必要ない点は疑問。どうせなら「Outward」のようにバイタルサイン(水分補給要素等)も入れて欲しかった。
  • 前回のアビス行きで使ったロープやハーケンが次にアビスに行くと全て初期化され無くなっている。
  • 行きのルートで使ったギミックが帰り時には使えなくなっている事が多い。そのため行きのルート構築と帰りのルート構築を別々に行う事が要求される。
  • 戦闘で全く面白くないQTEが強制される。(一部の原生生物やボス戦)ランダム表示からのボタンを押す、連打する等。原生生物を多数倒す必要がある場合、QTEを何回もしなければならない。
  • NPCがアビス内に同行する場合があるが、少ない台詞パターンをずっと連呼する(しかも状況に全く合っていない台詞)、NPCにも体力バーがあるにも関わらずひたすら敵に戦闘を仕掛ける、スタックしたようにカクカクし続けるなど、非常に不安定。自キャラ近くにワープして来るため、イベントが完了するまでとは言え、ここまでNPCの挙動がおかしいゲームは余り見た事がない。
  • 深界四層と五層は手抜きとまではないにしろ、非常に簡単なエリアになっており、三層が難しいだけに拍子抜けする。
  • オースの街はメニュー選択形式で、街を歩き回る事は出来ない。
  • キャンプ要素がなく、アビス内部でテントを貼ったりは出来ない。(イベントシーンのみ)
  • ここまで苦行に満ちたゲーム性を志行するのなら、むしろ全ての要素を非プレイアブルにして超高難易度に振り切っても良かった。全階層を三層並の難易度にし、ファストトラベル撤廃、水分補給要素ありであれば、屈指の難易度になり、クリアは困難にはなるが逆に話題性が上がっただろう。

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