『アサシンクリード シンジケート』(PS4版)でシークエンス9メモリー4を全クリア済みとなったため、ゲームレビューを投稿する。
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レビュースコア
レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。
総評
『アサシンクリード シンジケート』は、ユービーアイソフトのアサシンクリードシリーズ最新作で、ヴィクトリア朝ロンドンをオープンワールドの舞台としたゲーム。
主人公である二人の暗殺姉弟を軸に、アサシン教団とテンプル騎士団の暗闘を描く。
個人的には、陰鬱で薄汚い18~19世紀のロンドンを闊歩できる夢のようなゲームの筈だったが、ストーリークリア後の感想としては、「非常に大味なゲーム」という印象だった。
これは、筆者がアサシンクリードシリーズを初プレイという事も影響しているかもしれない。
以下、総評として何故『アサシンクリード シンジケート』が大味だったかを述べていく。
まず、このゲームにはゲームシステム的に4つの面がある。
- ロンドンのカラーギャング抗争による国盗り
- アサシン教団とテンプル騎士団の歴史上の暗闘
- シティアドベンチャー
- オープンワールドの探索
ロンドンのカラーギャング抗争による国盗りについて
最初はロンドン市街のマップが全て「ブライターズ」という敵対ギャングに占拠されており、これに対して「ルークス」というギャング団を設立して対抗しようとする。
これが非常にゲーム性に乏しい内容で、ただマップを赤から白に変える作業だが、面倒なだけだった。
ロンドンのマップ 各市街区毎にギャングの縄張りが設定されている
このゲームにはシミュレーション的側面はないため、純粋にアクション要素しかない。
アクションしかないゲーム性で国盗りを表現しようとしたため、マップ上にある敵ギャング拠点を次々に制圧していき、制圧100%になったら団体戦をして勝った方がその地区を制圧出来るという流れになる。
マップ制圧のチュートリアル 各地区に敵拠点があり制圧すると団体戦が発生して勝つとその地区が解放される形式
しかし、制圧するために敵拠点でやることは児童解放かテンプル騎士団狩りか賞金稼ぎの何れかしかない。
全ての地区の全ての拠点において、このどれかを指定され達成すると制圧度が上がる。そのためどの地区でも同じことの繰り返しになる。
また、制圧下の地区が増えても収入が多少増える程度でそれ以外にゲーム的に変化はない。
例えば、この地区は縦横にある鉄道が交わる中心拠点で、現在は敵ギャングに抑えられているが、支配下におけば拠点同士の行き来が飛躍的に楽になる、といった特徴はない。そのため戦略的な攻略要素はなく、機械的に制圧100%の地区を増やしていくだけになる。
ブライターズのギャングMobも動きは全て同じであるため、ギャングの地区ごとの特徴はなく、まるでロボットを相手にしているような気分になる。
味方の「ルークス」というギャング団を戦闘に参加させる事が出来るのだが、実際にやれる事は、暗殺の指定場所に行き、高所に上り「タカの目」を使って、場所を確認したら暗殺に移るだけだ。
味方ギャングに対して可能な行動は「馬車を呼ぶ」「着いて来させる」「その場で待機させる」「解散させる」くらいしか命令が出来ない。
偶然陽動に役立っている事はあるが、戦力としてはほぼ使えないに等しい。
ギャング同士の地区抗争という部分でのゲーム性は、ほぼ皆無といっていい内容だが、マップが広いため、地区抗争にかける時間がかなり多くなってしまう。
この部分の「面白くなさ」はしかし、オープンワールドにおける「移動の楽しさ」や「移動の快適さ」がフィーチャーされることで、つまらなさが隠匿されてしまっている。
実際に数時間プレイしてみて、始めて「つまらない」と分かる。
また、ゲーム性においても、ギャングの抗争と暗殺という二つがどうしても筆者の中では両立出来ない。
暗殺という行為は、暗殺者の正体や存在を秘匿して密かに行うものだが、このゲームの暗殺姉弟は、ギャングを率いて率先して抗争の先頭を切る。
暗殺者であるのに、そんなに顔バレして大丈夫なのかと思ってしまうほどだ。
ギャングを取り仕切る人物と暗殺者が別であれば問題はないと思うが、ゲーム内では弟のジェイコブが「じゃあギャング作ろうぜ!ボスはオレな!」という程度の軽いノリでギャングを設立する。
冷静な筈の姉エヴィーも、弟の勢いに流されて団体戦では「この地区はもらったわ!」等と宣言する。
左:弟ジェイコブ 中央:姉エヴィー 右:アサシン教団のグリーン
ギャングの抗争という面からは外れるが、この姉弟のキャラクターには違和感しか感じなかった。
暗殺者一家の後継者の姉弟という彼らも、ロンドンには最初からいるわけではなく、圧制に苦しむ人たちを救うためにやってくるという設定になっている。
しかし姉弟は、いきなりギャング団を設立して街で大暴れを始める。
ロンドンには従来からアサシン教団のグリーン等がおり、彼等はこれまで組織ネットワークを腐心して構築して来ている。
姉弟はそのような事情を無視して好き勝手をやっても、お咎めは特にない。
幾ら能力が高いからとて、こんな滅茶苦茶な連中が組織内に勢力を伸ばしてきたら、必ず内部で粛清される動きがありそうなものだが、制圧が100%になってもそういったシナリオは今のところ発生していない。
この辺りも、このゲームが純粋にアクションゲームであり、特に深く考えずパルクールアクションや暗殺ミッションを楽しんでもらいたい、というゲームだからなのだろう。
逆にシリーズ初プレイの筆者には、そういう面ばかり目に付いた。
歴史の狭間で行われるアサシン教団とテンプル騎士団の暗闘について
アサシン教団とテンプル騎士団の暗闘については、現実世界からショーン・ヘイスティングスとレベッカ・クレインのカットシーンでもフォローされるし、ミッションでも主要な扱いを受けている。
但し、キャラクターのインパクトが弱いため、この部分についても若干の弱さが否めない。
プレイアブルキャラクターはプリセットされているが、二人ともキャラクターに面白みがない。
ゲーム中では敵組織の人間を大量に排除、殺害する事になるが、二人ともそういった設定の影の部分はなく、明るく元気な性格で軽口を飛ばしながら暗殺ミッションに精を出す。
人間が人を殺すという事は目を背けられる物ではなく、必ず業を背負う事になる。
その業がゲーム内で全く表現されていない気持ち悪さがある。
ないならないで、サイコパス的な部分もあって然るべきと思うが、彼らの立ち位置はあくまでも弱者を救うヒーローキャラである。
それは彼らが強制労働を強いられている児童の解放や、搾取する為政者を排除する善行をしているからだが、それにしても違和感を拭えなかった。
姉弟が現実のショーンやレベッカが操作しているキャラクターに過ぎず、殺す対象もデータやプログラム、と言うなら一定の説明は付くが、あえてそうしたプレイヤーに向けられる説明もない。
むしろ、現実から関与しているショーンやレベッカの方の人物説明が面白く興味があった。
ちなみに敵対勢力の主要人物については、皆社会的地位がありながらどこかクレイジーな雰囲気があり、良かったと思う。
シティアドベンチャーについて
このゲームでは良く出来ている部分の一つだ。
特に、舞台と年代を生かして、コナン・ドイルやチャールズ・ディケンズ、カール・マルクスやチャールズ・ダーウィン等とミッションで絡めるのは楽しい。
ロンドンを舞台にしたオープンワールドでの冒険について
このゲーム特有の移動の快適さと楽しさが加わり、最も面白いパートだろう。
残念な点は、移動中に起こる群集イベントがお粗末であること。ウォッチドッグスと同様のつまらないイベントしか起きない。
列車の中で発生するギャング内の人間関係のイベントだけは面白いものがあった。
総評すると、アサクリ特有のパルクールアクションとスピード感に加え、ロープランチャーによる高速移動で、ロンドン市街を駆け巡るのが楽しいゲームになっている。
オープンワールドの移動がこれだけ楽しいゲームは始めてだと思う。
ヴィクトリア朝の有名人と絡めるのも楽しい。
しかし、ギャング抗争のパートを始めとして、ユービーアイソフト特有の大味なゲーム性が至る所に感じられる。
その他の評価点
Good | Bad |
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