ここ数年、ゲームのオンラインセッションが流行り始め、それと同じくして『クトゥルフの呼び声』の動画リプレイが大流行したのは記憶に新しい。
元々筆者はテーブルトークのヘビーユーザーで、例えば以下のようなTRPGをプレイしていた。
※ TRPG……テーブルトークロールプレイングゲーム。卓上で紙、鉛筆、サイコロ(ダイス)を使い、マスターとプレイヤーに分かれて会話しながらファンタジー世界等の冒険をプレイする形式のゲーム。日本では1980~1990年代に流行した。
筆者がプレイしていた主なTRPGは以下のようなものがあった。
D&D(ダンジョンズアンドドラゴンズ)
- 『D&D』ダンジョンズアンドドラゴンズ。黎明期の代表的なテーブルトークRPGの一つ。ウィザードリィ等のコンピューターゲームの元になったことで有名である。
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クトゥルフの呼び声
- 『クトゥルフの呼び声』HPラヴクラフトの小説のコズミックホラーをテーブルトークにしたもの。未だに根強い人気があり、ホラーRPGリプレイの動画投稿では定番の人気テーマである。
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T&T(トンネルズアンドトロールズ)
- 『T&T』トンネルズアンドトロールズ。6面体ダイスのみを使うゲーム。ソロシナリオが多いことが特徴で、ゲームブックに近い感覚で遊べる。
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ストームブリンガー
- 『ストームブリンガー』マイケル・ムアコックのエルリック・シリーズやエターナルチャンピオンの世界観を基にした、ダークファンタジーRPG。
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ソードワールドRPG
- 『ソードワールドRPG』グループSNE制作による和製TRPG。雑誌「コンプティーク」に連載していたTRPGリプレイ ロードス島戦記の反響を受けて作られた。文庫のルールブック1冊と6面体ダイスで手軽に遊べるゲームとして日本での更なるTPRGの普及に貢献した。
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ウォーハンマー
- 『ウォーハンマー』中世ヨーロッパの泥臭い世界観をテーマにしたダークファンタジーRPG。グループSNEによる翻訳で日本出版された。
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他にも『ロードス島戦記TRPG』『ウィザードリィTRPG』『メタルヘッド』などプレイしたゲームは枚挙に暇がない。
ほぼ週1~2ペースで友人宅に集まってプレイしていたので、同時期のプレイヤーからしてもかなりのヘビーユーザーだったと思う。テーブルトークのセッションについては4人か5人、常に集まれるメンバーがいて、筆者を含めてほぼ全員シナリオを作れてマスターが出来たので、メンバー的には割合恵まれていた方と思う。
TRPGは鬱々とした学生生活の中でも、気分を発散するハレの効果もあり、その名の通り”ロールプレイング”=役割を演技するゲームのため、セッションの中で会話して進めていくことで人と話すことを苦にしないような外交的な部分を養ったりと、大げさに言えば当時の筆者にとってはとても重要なものだった。
しかしその後、筆者やメンバーは大学や就職などにより忙しくなり、セッションを囲んだ仲間とも地理的に離れてプレイから遠ざかっていった。時を同じくしてTRPG自体も下火になり始めた。
そういう筆者から見れば、昨今の東方などのキャラクターを使った動画リプレイでの盛り上がりや、オンラインセッションという新たなプレイ方法により、テーブルトークが息を吹き返したのを見ると、むしろ驚きのほうが先にある。
当時はインターネットはなく、郵便でゲームをやっていた(メイルゲーム、プレイバイメイルなどと呼ばれる。郵便で行動を送り、結果を短い小説で受け取る形式。『蓬莱学園の冒険!』などがヒットした。)くらいなので、ネットで知らない人同士が集まってセッションをやったり、自分で作ったリプレイ動画をネットにアップする、などというのは考えられなかった。(ネットがないので、当然プレイはいつもほぼ同じメンバーだった。マスターは一人だとシナリオを作るのがきついので、別のゲームのマスターとして持ち回りで担当していた。)
ロードス島戦記オンライン開始と安田先生のロードス島リプレイ当時のお話
ようやく本題だが、80年代後半に一連のメディアミックスで大人気となった『ロードス島戦記』だが、これまでSFCなどでゲーム化されたことがあったが、昨日からオンラインゲームの「ロードス島戦記オンライン」が開始された。
ネオクラシックMMORPG ロードス島戦記オンライン |Pmang公式(ゲームオン運営)
それに伴い、グループSNEの代表安田均先生が動画解説されていた。
グループSNEと言えば、伝説的なコンプティークの誌上リプレイでテーブルトーク人気に火を付け、その後もゲーム展開、小説やアニメなどのメディアミックスで一気に日本のライトファンタジーをメジャー化した印象のあるクリエイター集団である。
MMORPG『ロードス島戦記オンライン』 スペシャルムービー安田均氏ver.
ロードス島のリプレイの経緯、そして当時のテーブルトーク勃興前夜の熱を安田先生本人が説明されていた。
これまでご本人動画などを見た事が無かったので初めてお姿を拝見したと思う。
安田先生は、どちらかというとゲームのリプレイや小説よりも、ドラゴンランス戦記の翻訳など、海外文学の翻訳活動が主業務の様だったが、その周りでは先生がスカウトした水野良、清松みゆき、山本弘、佐脇洋平、高山浩、友野詳などの才能が綺羅星のごとく結集していた。
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当時筆者も夢中になって遊んだ(苦しんだ)『ラプラスの魔』(アメリカの片田舎で起こる幽霊騒ぎの謎を解くべく、古びた館に集まった一行を次々と怪奇現象が襲う。館からの脱出だけでも難しく、難易度の高いホラーRPG。PC88、98、MSX、SFCなどに移植された。)もシナリオ、原案を担当したのが安田均先生とグループSNEだ。
その後、山本弘氏によって小説化もされて、ロードス島の小説やアニメを見ていた筆者たちは当然のようにラプラスの魔の小説版も読んでいた。
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雑誌の「コンプティーク」は福袋を目当てに中学生や高校生はパソコンを持っていなくても大抵買って読んでいたのだが、その中でも異色の「ファンタジーリプレイ」という読み物の『ロードス島戦記』シリーズは毎回とても楽しみに読んでいた。
安田先生は謙遜されて「自分にとってはイベント」とお話されていたが、1980-90年代の日本のTRPGを引っ張ったのは、紛れもなく「安田均とグループSNE」に違いない。
彼らにも今のオンラインセッションや動画リプレイの全盛、MMORPGによるロードス島戦記などの活況は予想だにしなかったものだと思う。
他にはグループSNEは神戸にあったと思うが、先生本人も関西特有のノリというか面白おかしく当時の様子を語られていたが、最後はオチがないのをちょっと気にされる所まで関西人気質なのだと感じた。非常に貴重で面白いお話だった。
安田均先生のお話の概要
- 最初は海外のゲーム雑誌の広告で『D&D』と『トラベラー』(SFを題材にしたテーブルトークRPG)が載っていてD&Dを取り寄せてみたが、何のゲームか分からないので、当時京大のSF研の学生たちに渡してようやくテーブルトークRPG、TRPGというゲームだと分かった。これこそ新しいSFだと思った。
- 何とかTRPGを広めたかったが、シナリオを作る必要があり、難しいため、関西の小説サークルに持っていき、話を作るのが上手い学生たちなら何とかしてくれるだろうと思った。そこには水野良や山本弘などの後のSNEのメンバーがいた。
特に水野良は話の持って行き方が上手く、DM(ダンジョンマスター。ゲームマスターと同じ。TRPGのシナリオを作りセッションを仕切るMC)に向いていた。 - 誌上リプレイを思いついたのはサークルの中でセッションを日記のように書いている人がいてヒントをもらった。仕事の会議でも議事録をテープ起こしすると建前と本音があるのでそれをストーリー仕立てにすると面白いと思った。会社の議事録はちゃんと書かないといけないが、本音では(あいつ許さん!)とかあって、本音と建前が違うというのは昔から思っていたが、リプレイと議事録が合体するとそういうギャップがあって面白いに違いないと思った。
- 当時は『タクティクス』というゲーム雑誌があり『トラベラー』で特集を組んでみたが、この雑誌はゲーム中心だったのでお話を載せるには向いていなかった。コンプティークから企画の話が来た時、リプレイでという流れになった。リプレイも水野に書かせると、最初からイメージどおりの面白い話を書いてきた。
- D&Dは当然水野良がDMになった。安田先生はギム(ドワーフの戦士でいぶし銀のキャラクター)で大人しくプレイしようと思っていた。(その割には、ギムは結構過激な発言が多い。)
ディードリットは最初の台詞は「トラップ外しに命を賭けるディードリットです」だった。(ディードリット はロードス島戦記に登場する主人公格の女性エルフ。日本人のエルフのイメージを決定付けたキャラクター。当時は山本弘がプレイヤーを担当。その後、小説やOVAなどで人気が出た) - スレイン(スレイン・スターシーカー。パーティーの魔法使い。のんびりした口調が特徴)の死んだ振りもDM水野が上手くマスタリングしたおかげで面白くなった。
- 当時はTRPG誌上リプレイが流行る下地ができていた。ウィザードリィなどのコンピュータゲームの勃興とゲームブックの流行。
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ロードス島戦記 誌上リプレイ(動画)
ロードス島戦記のコンプティーク連載誌上リプレイはこちらで動画化されている。当時の雑誌の雰囲気がつかめるのではないだろうか。
ロードス島戦記RPGリプレイ2020
何と2020年になりロードス島戦記RPGリプレイが4Gamer誌上で新連載として復活。「放浪貴公子のはてしない家路」が以下のページで連載されているので、初代ロードス島戦記のファンだった人には要チェックだ。
ロードス島戦記RPG2020「1stセッション 平穏への侵入者」
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