ゲームレビュー ウィッチャー3ワイルドハント(The Witcher3: WildHunt)「絢爛にして陰鬱な戦禍の世界で生きるモンスタースレイヤー・ゲラルトの物語」【PS4】

ゲームレビュー ウィッチャー3ワイルドハント(The Witcher3: WildHunt)「絢爛にして陰鬱な戦禍の世界で生きるモンスタースレイヤー・ゲラルトの物語」【PS4】

PS4の『ウィッチャー3 ワイルドハント』ストーリークリア後のゲームレビューを上げる。

『ウィッチャ-3 ワイルドハント』 ゲームプレイ トレーラー

SPONSORED LINK

レビュースコア

ゲームタイトル スコア ランク 評価観点
ウィッチャー3ワイルドハント
8 A
  • インプレッションはかなり面白い、または名作と感じる
  • ゲームを構成する要素(世界観、キャラクター、ストーリー、UI、システム、戦闘、音楽等)からゲームでディープな体験をしていると感じる
  • 大多数のユーザーやメディアから傑作と評価される
  • 購入前の期待値を遥かに上回る圧倒的な面白さ
[寸評]
2015年発売の大作RPG。開発会社はポーランドのCD Projekt RED。「ウィッチャーシリーズ」としては3作目だが、3作目のこの『ワイルドハント』が爆発的なヒットとなり、世界中に名を知らしめた。
ウィッチャー3は、原作を元にゲーム化されており、元の小説はアンドレイ・サプコフスキの『ウィッチャー』である。
ゲームでは、リヴィアのゲラルトと呼ばれるモンスタースレイヤーとなり、人々に忌み嫌われながらも、モンスターを討伐する異端の存在になる。
戦乱と暗雲が覆う大陸各地を渡り歩きながら、行方不明になった養女のシリを探すためゲラルトは旅に出る。
画面は一般的なTPSで、戦闘もどちらかというと大味だが、会話のスクリプトの多さと展開の多彩さに、「これは本当にゲームなのか」と眩暈がするほど。『ドラゴンエイジ:オリジンズ』のように開発者の狂気を感じるゲームの一つである。
ゲーム内ゲームの「グウェント」にゲラルトがはまっているという設定もあり、世界観は非常に凝っている。また、「ウィッチャーの感覚」を使って状況証拠を元に現場で何が起きたのかを推理するシークエンスもあり、サイドクエストと言えども飽きさせない工夫がされている。
単なるハイファンタジーではなく、どちらかというと陰鬱で汚らしい世界を描いたダークファンタジーであり、大人の関係を描いた描写シーンも多めのため万人受けするゲームではないが、人生で一度はプレイすべきゲームだと感じる。
2015/5/24変更履歴 旧レビュー形式で記事を新規投稿(旧レビュー88点⇒80点に変更)
2021/11/1変更履歴 旧レビュー形式を新形式に変更。旧レビュー80点を新レビュースコア8,ランクをAに変更。
  • ジャンル:オープンワールド/RPG
  • プレイ人数:シングル
  • プラットフォーム:Microsoft Windows/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X/S/Nintendo Switch
  • 発売日:2015年5月19日
  • 開発:CD Projekt RED
  • パブリッシャー:CD Projekt

レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。

クリア直後の感想

クリアした後、上質な小説の読後感や映画を鑑賞した後のような心地よい疲労感と一抹の寂しさに囚われた。
名残惜しく、意味なくぶらついてみたり。本当に凄いゲームだった。
ストーリーテリングの上手さ、演出の上手さにただただ圧倒される。
本当にゲームのキャラとは思えないほど濃密な政治と人間関係のドラマが展開される。
もはやゲームという域を超えた、プレイアブル映画というか、新しいメディアのようにも感じる。
自分でクリエイションしていない、用意されたゲラルトという渋みのあるキャラクターで、有体に言えば思い入れのないキャラクターで開始し、これだけ物語に没入感を与えることが出来るという事をこのゲームで証明された。
今年プレイしたゲームでは当然ベスト。
自分の人生の中でもトップ10に入るくらい素晴らしいゲームだった。

ウィッチャー3の美しいカットシーンの数々


総評


オープンワールドのスケール感が凄まじい大作。
このゲームにおける世界観の作り込みは完全に常軌を逸しており、「何かの作品を作る」という事に対する人間の持つ情念と拘り、狂気と凄まじさを改めて感じる。
人間が何かを創造するという事は本来畏敬すべき行為であり、それが『ウィッチャー3』というゲームに結実した結果、とてつもない大作ゲームが生まれた。

『ウィッチャー3』の世界は単なるファンタジーでなくリアルな中世世界を目指して構築されている。
そうした世界で流れ者として生きるモンスタースレイヤー<リヴィアのゲラルト>の目を通して、物語では戦乱と混沌のさ中で生きる人間の浅ましさ、醜さ、或いは逞しさが克明に描かれていく。
そう、このゲームの主人公はゲラルトではなく、この世界で悲喜交々する人々なのだ。
ゲームにはカットシーンがないクエストは存在しないと言い切っていいほど、大量のカットシーンが饒舌にシーンを彩る。

戦闘はやや大味でそこに面白みを感じる部分は少ないかもしれない。しかし、紛れもなく2015年を代表する作品であり、現存するゲームの中でも最高峰の作品である事は間違いない。
ウィッチャー3での、これほどまでの世界観と作り込みを可能にしているのは、原作小説がある事も一因だろう。ウィッチャーは小説が原作であり3部作構成となっている。

アンドレイ・サプコフスキ(英語版、ポーランド語版)によるポーランドのファンタジー小説『魔法剣士ゲラルト』(原題:Saga o wiedźminie)を原作とする本作は 、ウィッチャーと呼ばれる魔物退治の専門家、リヴィアのゲラルト(英語版)の活躍を描いたウィッチャーシリーズの3作目にして、最後のゲラルトの物語である。

出展:ウィッチャー3 ワイルドハント – Wikipedia

長編ではこれらの作品があり、「エルフの血脈」のみ日本語訳で出版されている。

  • Blood of Elves
  • Times of Contempt
  • Baptism of Fire
  • The Swallow’s Tower
  • Lady of the Lake

ウィッチャー3の世界観が気に入った方は、ぜひ原作小説も手に取って見られてはいかがだろうか。

「エルフの血脈」(日本語版 ハヤカワ文庫FT)

エルフの血脈 (魔法剣士ゲラルト)
アンドレイ・サプコフスキ
早川書房
売り上げランキング: 109,154

エルフ、ドワーフ、人間など異種族が入り乱れるこの大陸で、北方諸国は南のニルフガルド帝国の侵攻を受けた。
激しい戦争がシントラ国の犠牲のすえ幕を閉じた二年後、魔法剣士ゲラルトは、人里離れた砦で少女シリに訓練を授けていた。
折しもゲリラ集団が跳梁し、短かった平和がほころびつつあるなか、シリを狙う者の魔手がそれぞれに忍び寄る!
ポーランド人作家が強く気高い英雄を描きレジェンド賞受賞を受賞した傑作、ここに開幕!

出展:「エルフの血脈」Amazon「BOOK」データベース

ウィッチャー3での戦闘シーン

美しく幻想的なシーンが多いウィッチャー3


ゲラルトがはまっているというトレーディングカードゲーム「グウェント」

その他の評価点

Good Bad
  • オープンワールド、戦闘とも全体に無難で隙がないシステム。
  • カットシーンは異常な数があり、世界観を懇切丁寧にフォローバックしている。
  • 中世暗黒時代の差別や残酷表現があり、いわゆる王道ファンタジーというよりダークファンタジー寄りで、中世という世界観を重厚に再現しようとしている。
  • 人体の切断、欠損表現やセックスシーンなど際どいシーンが頻繁に登場する大人向けのゲーム。
  • マップが広くファストトラベルでも限定的にしか移動できない。世界が広いと否応なく思わされる反面、馬で街道を走らせる分にはボタン押しっ放しで済む等操作性にも配慮されている。
  • 全体的にキャラクターの動作の慣性が強すぎるが、マウントに関しては思うように扱えないリアルさがある。
  • 会話に多数の選択肢があり、選択によってその後の展開が大きく変わる。
  • 時間や天候が変化する。
  • NPC動物やクリーチャーのAIが生態系らしき行動を取る。
  • ウィッチャーの感覚で、状況証拠のみから何が起きたかを推理していく過程は、ミステリのようで面白い。
  • 安易なQTEがない。
  • ゲーム内ゲームやホースレース、野良ボクシング大会等ミニゲームが多くゲームを飽きさせない工夫。
  • ゲーム本編内でデッキカードゲーム(グウェント)を持ち込んだアイデアが面白い。グウェント自体がよりゲーム性が練りこまれていれば良かったのだが、現状そこまで面白いものではない。
  • フリーイベント(サブクエスト)の発生が自然で、その世界で本当に生きているかのように感じてくる。
  • 死んだ後のロード時間が長く1分以上かかる。
  • カットシーンがかなり多いので、1クエストの進行にも相当な時間がかかる。
  • 選択肢が多くセーブ枠が少ないため、新たなセーブをする場合は毎回消さないといけなくなる。
  • 動作がもっさりしている。挙動がリアル志向なので、慣性が強くキャラクターを動かすのにストレスがたまりやすい。
  • 近接武器は幾つか種類はあるが基本的に剣のみで、振りも小と大の2種類しかなく戦闘のバリエーションが薄い。総じて戦闘に迫力や打撃感といったものはない。
  • 一見、TPS戦闘に見えるが、実態は主人公を中心とした挙動でなく、主人公も他キャラと同じようなスケールになる。
  • 名声や逸話に反して序盤は主人公がかなり弱いので違和感がある。
  • BGMに印象に残るものがない。北欧風の音楽で戦闘シーンでも余り緊張感が出ていない。
  • NPCモブキャラの顔が使い回しが多い。
  • グウェントについてはゲーム内ゲームのアイデア自体は面白いのだが、勝敗はレアカードを何枚持っているかになりがちでカードゲームとしての面白みが薄い。結局レアカードがあれば勝つので戦略的な要素が薄い。
  • カットシーンをボタン一回で飛ばせず何回も押す必要がある。死んだ後のやり直しのときにカットシーンがあるときは結構辛い。
  • 選択肢によってはクエスト指示がなくなり詰みやすい。
  • マップ画面に建物の表記がないので迷いやすい。
  • ロード時に画面が真っ白になることがある。
  • 商人と売買のときも毎回会話シーンになり飛ばすのが面倒くさい。
  • アイテムの数や種類が多すぎて一見してどこに何があるか分からない。アイテムソートも出来ない。アイテムが多すぎるとインベントリの動作が重くなる。
  • 錬金で作ったアイテムの数がゼロになってもアイテムがあるという判定になるためか、錬金で作ることが出来ない。
  • シリーズ3作目なので仕方ないが、会話に唐突に出てくる人名、彼らの関係性、用語がほとんど理解不能。人物辞典を読んでも背景の理解までは至らない。
  • 戦闘に関しては明らかにテストが甘い。味方のコンパニオンの魔法攻撃に延々とノックバックされ続けたり、地形ハメしやすい敵が多い。
  • オブジェクトが多いゲームなので仕方がないが、バグや不正終了が多過ぎる。30時間程度のプレイ時間で不正終了が3回発生。動作バグ2回、誤字も一箇所あった。バグの1つは、クエスト『またとない機会』でネズミ部屋の前まで来て入り口でトリスがフリーズして中に入れなくなった。一度メインメニューに戻りコンティニューすると進行が再開された。2つ目はクエスト『色欲』でガス・マイヤーが宙に浮いていた。誤字はプログラム言語の処理時の文字列がそのまま書いてある箇所があった。
  • クエストマーカーが全く関係ない場所を指していることがある。サイドクエスト「アンドヴィクの王」でマーカーは廃屋内部を指しているが、アースカー遺跡、近くの廃屋のどちらにも捜索対象のヤルマールはおらず、実際にヤルマールがいるのはドーヴの廃墟ということがあった。

ウィッチャー3ワイルドハントカテゴリの最新記事