「窓に!窓に!」ダークサイドミステリー幻解!超常ファイルでラヴクラフトとクトゥルフ神話が特集「闇の神話を創った男 H.P.ラヴクラフト」

「窓に!窓に!」ダークサイドミステリー幻解!超常ファイルでラヴクラフトとクトゥルフ神話が特集「闇の神話を創った男 H.P.ラヴクラフト」

超常現象、謎、ミステリーをテーマにしたNHKの番組「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー(以下ダークサイドミステリー)」は唯一テレビ番組で見ている番組ですが、ダークサイドミステリー「闇の神話を創った男 H.P.ラヴクラフト」(2019年9月放映)で、クトゥルフが特集テーマになっていたのを知って驚きました。

ダークサイドミステリー番組HP

「闇の神話を創った男 H.P.ラヴクラフト」 今なぜ?静かなブーム“クトゥルー神話”とは?平和な日常に忍び寄る恐怖の怪物・邪神たち!有名な映画やアニメに大きな影響を与えた伝説のホラー作家。魅力と実像に迫る。 今、映画やアニメ、マンガ、小説など世界のクリエイターたちに多大な影響を与えている暗黒伝説“クトゥルー神話”!100年前の作家がなぜ、現代人も恐れる宇宙的恐怖“コズミック・ホラー”を生み出せたのか?平和な日常に忍び寄る恐怖と混とん。代表作の数々を紹介しながら、伝説の作家ラヴクラフトの創作と魅力の秘密に迫る。ラヴクラフト作品を愛してやまない俳優・佐野史郎が、貴重な映像とともに、尽きない魅力を熱く語る。

(出展:https://www4.nhk.or.jp/darkside/2/

この記事では、クトゥルフ神話と日本のサブカル作品についての話や、ニコニコのクトゥルフTRPGリプレイの紹介等をしています。

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クトゥルフと日本のサブカル作品

クトゥルフはアメリカの怪奇作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(H・P・ラヴクラフト, 以下ラヴクラフト)が1928年に発表した小説『クトゥルフの呼び声』に出てくる異形の邪神です。
クトゥルフは太古の地球を支配したものの、現在は海底の古代都市ルルイエで眠りにつき、星辰の位置が揃うと再び復活して地上を支配するといわれています。

ラヴクラフトと同世代の作家たちは、同人ネットワークのような関係で互いの設定や固有名詞を共有して「クトゥルフ神話体系」というシェアード・ユニバースを作っていきました。

クトゥルフは、日本でもサブカルジャンルとしては人気があり、『魔界水滸伝』(栗本薫,1981年)『妖神グルメ』(菊地秀行,1984年)等1980年代で既に小説のモチーフとして取り上げられていました。

近年ではライトノベルが原作で2009~2010年にアニメ化された『這いよれ! ニャル子さん』も有名です。

[合本版]這いよれ!ニャル子さん 全12巻 (GA文庫)
逢空 万太, 狐印
SBクリエイティブ (2017-06-08)
『這いよれ!ニャル子さんW』Blu-ray BOX(初回生産限定盤)
阿澄佳奈, 喜多村英梨, 松来未祐, 釘宮理恵, 新井里美, 長澤剛
エイベックス・ピクチャーズ (2015-05-22)

クトゥルフは2020年現在のサブカルジャンルとして、既に枯れたテーマと言ってもいいくらいですが、公共放送のNHKでもクトゥルフが扱われるのが意外というか面白かったです。

ダークサイドミステリーに出演している俳優の佐野史郎さんは、ラヴクラフティアン(ラヴクラフト愛好家)として有名で、自分でクトゥルフ神話小説を書いたり、ドラマ「インスマスを覆う影」(TBS,1992年)にも出演するほどラヴクラフト好きとして有名でした。
ダークサイドミステリーのゲストとしてはこれ以上ない人選です。

あとは岡田斗司夫がMCで、ゲストに作家・博物学者の荒俣宏氏(ラヴクラフト作品を翻訳)や、SF作家の山本弘氏*1(小説ゴーストハンターシリーズ執筆)を呼べれば最高でした。

クトゥルフ神話TRPGとゲームセッション

クトゥルフ神話をベースにした『クトゥルフ神話TRPG』は2020年現在でも依然として人気があり、それを受けてエンターブレイン(KADOKAWA)から、改定の新版ルールブックが2019年に発売されました。改定されたのは実に15年ぶりとの事です。

新クトゥルフ神話TRPG ルールブック (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
サンディ・ピーターセン, ポール・フリッカー, マイク・メイソン, ほか, 坂本 雅之, アーカム・メンバーズ
KADOKAWA (2019-12-20)

『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』PV

自分がラヴクラフトやクトゥルフを知ったのは高校くらいで、当時していたクトゥルフ神話TRPG(当時は「クトゥルフの呼び声」)で、他にやる人がいなかったので自分がルールブックを買ってゲームマスター(キーパー)をしていました。

クトゥルフTRPGはゲーム出版社ケイオシアム社製TRPGの汎用的なシステム(ベーシック・ロールプレイング)を使っていますが、割りと大雑把なルールであることと、正気度の扱いが難しい(狂気に陥ったキャラクターが操作不能になり、その間プレイヤーがする事がなくなるため、セッションに集中しなくなったり、漫画を読むなど別のことを始めるため。)ことから、クトゥルフのセッションは割りと難しいというか大味な展開になりがちでした。

解決策としてはクトゥルフの場合は正気度が失われて発狂の危険があるシーンをシナリオの終盤に用意して、そこで何人か発狂しても盛り上がるからいいや、という感じの割り切ったシナリオを組むことになります。
HPが低くすぐキャラクターが死亡するD&D*2とキャラクターが発狂する危険があるクトゥルフは、プレイヤーが離脱することが多くなるため、セッションがだれやすく、プレイが難しかったTRPGでした。

また、反面クトゥルフTRPGのセッションでは、探索者(キャラクター)が発狂する瞬間が最も楽しく、正気度を失った探索者が発狂する様を見て演じるプレイヤーが「ギャー発狂したー!」といって大騒ぎし、周りのプレイヤーが爆笑する、という感じのホラーとは正反対の雰囲気の爆笑セッションになります。

文字で書くのは難しいですが、TRPGセッションではダイスによって状況が二転三転し、展開がこの先どう転ぶのかがシナリオを書いたゲームマスターにも読めないため、場のテンションが高くなるとそういった雰囲気になります。

D&Dもそうですがクトゥルフもケイオシアム純正ルールだとプレイし辛いので、改訂版が出てプレイアビリティが向上し、当時とはかなり違うルールになっていると思います。
自分はシナリオを書くのは好きでしたがアドリブが下手だったので、キーパーのマスタリングとしては余り上手くありませんでした。

クトゥルフ神話TRPGを元にしたゲーム

早熟な友人がラヴクラフト全集を持っていたので自分も影響されて本を買い、「狂気の山脈にて」「インスマスを覆う影」等を当時読んでいました。

クトゥルフは『ラプラスの魔』(ハミングバードソフト,1987年)『邪聖剣ネクロマンサー』(ハドソン,1988年)等、ホラーゲームにも早期から取り入れられていました。
ラプラスの魔や邪聖剣ネクロマンサーでは単にクトゥルフ神話をモチーフにしたモンスターが出現するというだけでなく、パラメータとして恐怖値を持っているのが秀逸でした。

これは自分の記事から引用しますが、クトゥルフ神話と探索者の発狂というのは切っても切り離せない要素だと思います。

ダンジョン内で精神力がなくなると発狂して逃げ出すといったシステムはテーブルトークRPGの「クトゥルフ神話 TRPG」を元にしたデザインであり、コンピュータゲームでは古くは「ラプラスの魔」や「邪聖剣ネクロマンサー」といったゲームで採用されていたシステムだ。

ラプラスの魔では、精神力で霊体の敵に攻撃出来るが、こちらの精神力もダメージを受け、発狂すると逃げ出してパーティーを離脱し、館をさ迷う狂人となるというシステムだった。
邪聖剣ネクロマンサーでは、戦闘で逃亡を繰り返すと、裏ステータスである「恐怖値」が溜まり、パーティーを脱走するという仕様が入れられていた。

他にも、心理的な恐怖をゲームに取り入れたゲームでは、ゲームブックのファイティング・ファンタジーシリーズ「地獄の館」がある。

地獄の館では、「恐怖点」というそのものずばりの名前で恐怖を表し、館の中で遭遇する様々な出来事で、プレイヤーの恐怖点が上昇していき、恐怖が限界まで達するとショック死するというシステムになっていた。
(出展:ゲームレビュー Darkest Dungeon(ダーケストダンジョン)「クトゥルフ神話にストレス管理要素が加わった傑作ホラーローグライク」【Steam】

2015年に発売されたPS4アクション『Bloodborne』(ブラッドボーン)でも、クトゥルフ神話に出てくる固有名詞は直接使っていないものの、クトゥルフ神話の影響を大きく受けた世界観になっています。
Bloodborneでは、敵の精神攻撃によるダメージを受け続けると発狂して死亡するなど、アクションRPGにも関わらずシステム面でもキャラクターの発狂を取り入れています。

【PS4】Bloodborne PlayStation Hits
ソニー・インタラクティブエンタテインメント (2018-07-26)

Bloodborne The Old Hunters TGS2015トレーラー

2020年直近では、PS4で2019年にそのものずばり『コール・オブ・クトゥルフ』というゲームが出ています。

また、同じく2019年にPS4で『The Sinking City ~シンキング シティ~』というダゴン秘密教団を題材にしたゲームが出ています。
クトゥルフをテーマにしたゲームは海外でも人気があり、今後も作られていくと思います。

IGN Japan【先行プレイ】日本語版『The Sinking City』の序盤を実況プレイ【10月31日発売】

クトゥルフをテーマにしたニコニコ動画TRPGリプレイの隆盛

自分がTRPGを離れて久しくなった2012年前後から、ニコニコ動画のTRPGリプレイではクトゥルフものが人気になり、幾つもの傑作動画がネット上に公開されて人気を博しました。
現在でも沢山の作品が投稿されていますが、とても全てを紹介し切れないため、ここでは一部を紹介します。

  • なんとかかんとか氏作「ゆっくり達のクトゥルフの呼び声TRPG」
    クトゥルフTRPGリプレイ風動画の先駆者なんとかかんとか氏初の動画。キャラクター設定と戦闘シーンがとにかく面白い。途中打ち切りになりますがこの作品がきっかけでクトゥルフリプレイ風動画の人気に火が付いていきます。
    その後なんとかかんとか氏は1920~30年代を舞台にしたモダンエイジクトゥルフやジャズエイジクトゥルフを初めとして、クトゥルフリプレイ動画シリーズを次々に発表されています。

  • 朝霧カフカ氏作「ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話」
    リプレイ風動画から徐々にサスペンス色が強まり史上最大の恐怖が襲う、クトゥルフリプレイ風動画の金字塔。
    動画の作りとストーリーテリングが抜群に上手いです。
    版権問題のため動画は削除されましたが、作者の朝霧カフカ氏は『文豪ストレイドッグス』で商業デビューされています。

  • 接続設定氏作「初めてのクトゥルフ」
    接続設定氏の初作品。クトゥルフ初心者向け解説動画かと思っていたら、恐怖の世界に引き込まれていきます。

  • 接続設定氏作「大正九頭竜」
    大正時代を舞台にした接続設定氏の本格クトゥルフ架空創作物語動画。登場人物たちがクトゥルフ神話TRPGをプレイするうちに、いつの間にかクトゥルフ神話の世界に巻き込まれていく恐怖を描いています。
    世界観は「初めてのクトゥルフ」と繋がっていますが、恐怖の度合いはこちらの方が数段大きいです。
    ショックに弱い方は見られないほうがいいかもしれません。

グループSNEによる誌上リプレイが再び

クトゥルフ関連ではないですが、テーブルトークリプレイに関連した話題なので、ここで掲載させて頂きます。

1986年に雑誌『コンプティーク』誌上で、ゲームデザイナー集団グループSNEにより連載されたテーブルトークリプレイ『ロードス島戦記』は有名ですが、2020年にその再現となる誌上リプレイの連載が始まっています。

といっても、D&Dやクトゥルフではなく、『ゴブリンスレイヤー』の世界を舞台にした『ゴブリンスレイヤーTRPG』です。

ロードス島戦記は水野良氏作の完全オリジナル設定でしたが、ゴブリンスレイヤーは蝸牛くも氏作のオンライン小説やライトノベルが原作です。
連載は4gamer.netのWeb誌上で行われています。
2020年でも誌上リプレイは人気作品に脈々と受け継がれていました。

終わりに

まさか、NHKの番組で「Ia! Ia! Cthulhu fhtagn!」(信者がクトゥルフを讃える呪文)や「ヨグ=ソトース」「ニャルラトホテプ」などの単語を聞くとは思いませんでした。
ややまとまりの無い内容になりましたが、NHKでクトゥルフ神話が取り上げられていた衝撃から記事にしました。
後日記事に情報等を追加していければと思います。

こちらでも関連した記事を書いています。

ラヴクラフトやクトゥルフ神話体系に興味がある方のためにラヴクラフト全集の一部の商品リンクを掲載します。
小説はかなり難解ですが、ぜひラヴクラフトの暗黒神話世界の一端に触れていただければと思います。

ラヴクラフト全集 1 (創元推理文庫)
H・P・ラヴクラフト, 大西 尹明
東京創元社 (2012-10-25)
ラヴクラフト全集 2 (創元推理文庫)
H・P・ラヴクラフト, 宇野 利泰
東京創元社 (2012-10-25)
ラヴクラフト全集 3
H・P・ラヴクラフト, 大瀧 啓裕
東京創元社 (2013-11-29)

ダークサイドミステリー番組中で使われていたイラストは田辺剛さんによるもので、田辺さんの漫画はこちらです。

*1:この記事を書く時点では知らなかったのですが、山本弘氏は2018年に脳梗塞で入院し、その後回復されたものの現在リハビリをされているそうです。一日も早いご回復をお祈り致します。

*2:ダンジョンズ&ドラゴンズ。世界で最初のロールプレイングゲーム。ファンタジーを題材にしており、ウィザードリィ等のコンピュータRPGはダンジョンズ&ドラゴンズを一人でプレイするために開発されたものである。日本でも、1980年代にグループSNEによるロードス島戦記誌上リプレイのシステムに使われた。その後ロードス島戦記はメディアミックスの先駆けとなり、日本でのファンタジーのイメージを決定付けた。特にイラストレーターの出渕裕によるエルフのイラストは有名である。

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