ゲームレビュー 真・女神転生Ⅳ FINAL「完成度の高いナンバリングタイトル 据え置き機で出すべきシリーズ」【3DS】

ゲームレビュー 真・女神転生Ⅳ FINAL「完成度の高いナンバリングタイトル 据え置き機で出すべきシリーズ」【3DS】

3DSの真・女神転生Ⅳ FINALのゲームレビューを上げる。
(2016/3/20 難易度大戦 LV99(卵破壊ルートクリア済み エクストラステージ未クリア)

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レビュースコア

真・女神転生Ⅳ FINAL

85点(/100点)
(2016/6/13 90点⇒85点に下方修正)

非常に完成度が高いゲームで、ゲーム内の全ての要素が「女神転生」であるということを充足している。
3DSでは恐らくシリーズ最後のナンバリングタイトルとなる(今後はSwitchにナンバリングタイトルが移行する事が確定している)事から、シリーズファンは絶対にプレイしておくべきゲームといえる。

  • 真・女神転生IV FINAL 東京崩壊イメージアニメ
  • 真・女神転生IV FINAL PV#01
  • 真・女神転生IV FINAL PV#02

総評

前作『真・女神転生Ⅳ』の時点で完成されていたフォーマットに細かい点に手が入って更にプレイアビリティが高くなっている。

ターミナルでのファストトラベル等スピーディーな進行とオートバトル、一発逆転を秘めた油断出来ないプレスターンバトル、クールな世界観、死が直ぐ傍にありながらもどこかユーモアのある会話、一癖ふた癖あるキャラクター、テンションを高める素晴らしいBGMの数々、世界の行く末を左右するヒロイックなストーリー。
真に女神転生であるということをこのゲームが体現している。携帯機の3DSという脆弱なハードからは信じられないほどパワーのあるソフト。
もし据え置き機のPS4等で発売されていればと思わずにはいられない。

その他の評価点

Good Bad
  • 一見、カジュアルなキャラクターでライトユーザ向けのように見えるが、実は人間とは何か、人はどのように生きるべきか、どのように自分を超克すべきかといった重いテーマを扱っている。
  • 戦略的な部分が多くプレイヤーの選択や意思決定でプレイの有り様が大きく変わる自由度がある。また、成長要素は主人公のステータス、スキル、装備、スマホ機能拡張、悪魔スキル、悪魔レベルと能力値、スキル委譲と委譲スキルが同じだった場合のレベル加算、仲魔が別の悪魔に変異するハイレベルアップ、仲間の選択など、枚挙に暇がない。更に、スキルの変化や合体失敗など不確定要素も影響する。
  • 美しい画面、フルボイス、機能性の高い各種システムで満足度が高い。ビギナーにも導入でチュートリアル的に説明があり、プレイに優しい。
  • ダンジョンは立体的な構造が取り入れられている。
  • ボス戦では、こちらのテトラカーンに対しテトラコワースでの打ち消しや、弱っている仲魔を集中的に叩いて落としてくるなど、AIのアルゴリズムが手堅く手ごわい。
  • パートナーや仲魔とのインタラクティブな要素が大きく、一緒に冒険している感が大きく出ている。
    フラグが立ちイベント的に会話をするシーンを入れるのは別に珍しくないが、何も操作せず一定時間が経過した後に「君、どうした?」と仲間から言われるゲームと言うのは過去に記憶がないので印象に残る。
    なぜこのような試みをしたのか、聞きたい所では有る。
    (例)
    ・パーティーの仲魔と「トーク」するとアイテムをくれる
    ・まだ仲魔にしたことのない悪魔と戦った後⇒仲間から「あの悪魔仲魔にしてないよね?」「xxxは君の好みじゃない?」などとメッセージが来る
    ・レベル帯が近い悪魔を仲魔に出来た⇒仲間から「xxxを仲魔にするなんて中々やるな」などと言われる
    ・仲間からLINEのようなソフトで連絡が来て彼らの思っていることが分かる
    ・スマホにクエスト連絡が着信⇒クエストを受けられる
    ・何も操作しない時間が長くなる⇒仲間がどうした?と声を掛けてくる
  • 細かいアルゴリズムがリアル
    (例)
    ・悪魔に攻撃した後会話⇒会話を拒否される
    ・ある程度話した悪魔が去る⇒次に会ったときに結構話したので「友好的に思われているようだ」となり仲魔を申し出てくる
  • 悪魔合体ソフトで検索が出来るようになり、機能が向上。
  • 悪魔にステータスやスキルレベルがあり、成長させることが出来るので、同じ悪魔を使っていても個性が出る。また、同じスキルでも、強さ弱さがある。
    合体継承の際も悪魔によって得意・不得意があり、プラスになったりマイナスになったりするので、単純に有利なスキルだけ継承させていくことが難しい
  • 前作と違い、パートナーが戦闘でも役に立つ。
  • 前作のエストマソードは非常に使い辛かったが、今作からエストマになりエンカウント抑止がやり易くなった。
  • 製品としては当たり前だがバグや誤字誤植が全くと言っていいほど存在しない。きちんとテストプレイされていると感じる。
  • 前作で余りにも悲惨な最期だったナバールが、意外な形で復活して共闘出来る。製作者のキャラクター愛を感じる。
  • パートナーたちが自分の抱える問題や葛藤を克服して精神的に成長する過程が描かれている。
  • すれ違い音声のBGMが真・女神転生Iの音楽のremix版になっている。
  • 前作Ⅳのデータを引き継げる。
  • 攻撃の「貫通効果」と「コワース」魔法の導入により、カーン効果を崩す戦術が加わった。
  • Ⅳ FINALでは、普通に進めてニュートラルエンディングを迎えられるので、後味が悪くない。(前作Ⅳでは普通にやっていてもニュートラルに達するのが難しかった。)
  • 画面がホワイトフラッシュしないため目に優しい。(『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』や同作のリメイク『真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY』では戦闘画面に入るたびにホワイトフラッシュしていたため目によくなかった。)
  • 前作Ⅳからの引継ぎ方法が分かり辛い。
  • 悪魔絵が若干、従来の女神転生の世界観と異なる。
  • プレスターン戦闘の限界を感じる。結局はカードの絵柄合わせでしかない。
  • 陣形の概念がなく、召還悪魔は全員前衛になる。「タフネスな悪魔は前。HP低いがMP大目の悪魔は後ろ」といった戦術を取ることが出来ない。
  • フィジカル系の悪魔の技もMPを使うので、スキルを持っていても直ぐにMPが枯渇し宝の持ち腐れになりやすい。一応、MPが増えるスキルがあるので救済策がないというわけではないが……。従来の「HPが高くMPが低い悪魔だが、HPを消費する強力なフィジカルスキルを持っている」という方が多彩で面白かったと思う。
  • 戦闘で先制を取るために、操作しづらい小さな3DS画面で、エネミーシンボルに攻撃を当てないといけない。先制を取らなければ先制されて大ダメージを受ける。
  • フィールドマップが分かり辛く前作で不評だったのに改善されていない。
  • 装備が外見に反映されるのはいい点だが、コスプレ的なものが多く装備したいと思えるものが少ない。(モヒカン頭装備や上半身装備なのに何故か上半身が裸、アメフト、忍者等。)
  • ダンジョンが若干狭く構造が単純なため直ぐにクリア出来てしまう。
  • ゲームバランスのためだとは思うが高位の悪魔を作っても何らかの弱点持ちなのでがっかりする。
  • 店で買えないものが多くストレスが溜まる。(チャクラアイテムなど)
  • 金が入手し辛い。基本的にクエスト達成か、道に落ちている遺物を売るしかないが、クエストは中盤から徐々に少なくなる。遺物はリスポーンタイムがあるためひたすら移動し続けないといけない。戦闘では交渉や脅しを除き金銭は得られないので、金稼ぎの手段がかなり限られている。
  • スキル使用でMPを使う必要があるのに、MPの上限が少なく直ぐに枯渇するためストレスが半端ない。特にボス戦でのMP枯渇は深刻。MP回復アイテムも売っていないのでドロップでしか得られない。(ブラックカードを入手すれば銀座の高級ショップでチャクラアイテムが買える。)
  • 多神連合をクローズアップしたかったのは分かるがメルカバーとルシファーの存在意義がかなり薄い。地上を支配せんとする天使の長メルカバーと悪魔の長ルシファーを、何の戦略もない主人公パーティーがあっさり倒してしまい拍子抜けする。
  • 東狂の最深部に進むためのアイテムがDLCコンテンツからの購入のみとなっている。そのほかにも、追加コンテンツの配信をするのはいいが、余りに露骨な有料コンテンツ販売が目に付く。値段が安いのは良心的だが、本編は適当に作って後はDLCで販売、というのは風潮につながる懸念がある。
  • 「貫通効果」「コワース」魔法の導入によりカーン効果を崩す戦術が加わったが、速さで順番が決められ任意で順番をずらすことが出来ないシステムなので、実質的に意味がない。例えば、主人公が速さ200、コワース魔法の悪魔(仲魔)が速さ150だとすると、主人公が順番を後にずらす⇒仲魔のコワース魔法⇒主人公攻撃という手段は使えない。飽くまで主人公待機⇒仲魔のコワース魔法⇒ターン終了となるだけである。(途中でニヤリが出てプレスアイコンが増加した場合は除く)コワース魔法は1ターンのみ有効だが、敵悪魔のAIが延々と毎ターンカーン魔法をかけ続けると崩す手段がない。このように戦術・手段が強化されても基本のシステムに手が入っていないので、余り活かせていない。
  • DLCで後出し的に高難易度(終末)を追加するのは印象が悪い。

任天堂とアトラスの関係がユーザーに与えている影響について

※2020年1月26日追記
以下に書いている問題はSwitchの発売である程度緩和されていますが、ハードメーカーとソフトハウスの間に常にある問題提起としてそのまま掲載いたします。


これはゲーム自体の問題ではないので、別出しにしておく。
プレイして直ぐにこれは良作だと思ったことと、同時に3DSでなければどんなに素晴らしかっただろうと嘆息をついた。
3DSのスペックの低さはもうどうにもならないほどだ。
このソフトの最大の問題は3DSでリリースされたことだ。

モニターへの外部出力も出来ない。
本体を持ちながらのプレイも重く操作し辛い。
画面内の小さなキャラクターでシンボルカウンターへの攻撃もやり辛い。
キャプチャですら、満足にネットに上げられない。

こんな時代遅れの代物でメガテンをプレイする悲しさを感じざるを得ない。

『真・女神転生シリーズ』を3DS専用タイトルとして任天堂に差し出しているアトラス、モンスターハンターXを3DSでリリースしたカプコンもそうだが、ゲーム会社が任天堂への献上品じみたエースクラスのナンバリングタイトルを供給せざるを得ない事情もある。
それは分かる。
しかしユーザーの立場からすると、折角の良ゲーも3DSという低スペックのハードを押し付けられてプレイせざるを得ないのだということを、任天堂もソフト開発会社も理解してもらいたい。
ユーザーもこういう部分には声を上げていくべきだと思う。
でなければ今後もこうした歪な供給状況は変わらないだろう。

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