ゲームレビュー ディヴィニティ:オリジナル・シン EE「デストラップ満載だが自由度も高いタクティカルターンバトルRPGの傑作」【PS4】

ゲームレビュー ディヴィニティ:オリジナル・シン EE「デストラップ満載だが自由度も高いタクティカルターンバトルRPGの傑作」【PS4】

ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション(PS4版)のストーリーを難易度クラシックでクリアしたため、ゲームレビューと総評を投稿します。(2018年4月23日難易度クラシックでストーリークリア済み)

ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション
スパイク・チュンソフト (2016-04-14)
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レビュースコア

ゲームタイトル スコア ランク 評価観点
ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション
8 A
  • インプレッションはかなり面白い、または名作と感じる
  • ゲームを構成する要素(世界観、キャラクター、ストーリー、UI、システム、戦闘、音楽等)からゲームでディープな体験をしていると感じる
  • 大多数のユーザーやメディアから傑作と評価される
  • 購入前の期待値を遥かに上回る圧倒的な面白さ
[寸評]
主人公は特殊能力者であるソース使いをハントする<ソースハンター>。サイシールの街の町会議員が何者かに殺害された。
調査のため派遣された主人公は船で街に接近するが、オークの船団に囲まれているサイシール。辛うじて街に到着し犯人を追うソースハンターだが、やがて巨大な陰謀の企てが明らかになり……というゲーム内容。
画面は見下ろし型でアクションゲームのようにも見えるが、アクション要素はなく純粋なRPGで、戦闘ではターン制となりAPという行動ポイントを消費して一人ずつ行動を選択する。
ゲームの雰囲気は牧歌的だが、クエストマーカーがなくマップへのメモの書き込み、複数の要素を戦闘フィールドに発生させる事で環境系コンボが起こせる戦闘、アイテムのスタックが可能など、随所に革新的な要素が盛り込まれている。
絵面はいかにも洋ゲーという雰囲気だが、このゲームのシステムと世界観はJRPGにはなく、一度はまると病みつきになる。
個人的には傑作ゲームだと思うが、地味なスルメゲーのためか知る人ぞ知るゲームになってしまっている。

2016/4/26変更履歴 旧レビュー形式で初期投稿。(レビュースコア90点)
2016/12/2変更履歴 旧レビュー形式で90点から86点に下方修正。
2021/11/3変更履歴 旧レビュー形式を新形式に変更。旧レビュー86点を新レビュースコア8,ランクをAに変更。

  • ジャンル:RPG
  • プレイ人数:シングル/2名まで共闘プレイ可能
  • プラットフォーム:Steam/PlayStation 4/Xbox One
  • 発売日:2016年4月14日
  • 開発:ラリアンスタジオ
  • パブリッシャー: ラリアンスタジオ/スパイク・チュンソフト(PS4日本版)

レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。

総評

見た目はクオータービューの見下ろし視点で『ディアブロ』のようなアクションRPGに見えるが、実際にはアクション要素はなくAPを使った擬似ターン戦闘が特徴のRPGだ。
筆者の感覚で近いゲームは、『ドラゴンエイジ:オリジンズ』等がある。
日本製のゲームでは『ファイアーエムブレム』『タクティクスオウガ』のような戦闘画面がイメージしやすいかもしれない。
フィールドにはヘックスもなく動かすのは「ユニット」ではないが、戦闘はRPGというよりSLGに近いタクティクスバトルになる。

敵もフィールドやダンジョンでこちらと同じように動いているが「風来のシレン」ようなローグライクではなく、エンカウントして戦闘開始後は同じ画面で「戦闘開始」になり、双方が行動優先度の高い順にAPを消費して行動する。
行動後は、次に行動優先度の高い者が行動するという感じで戦闘が進行する。(一般的な「味方全体の行動ターンが終わったら敵の行動ターンになる」という単純なターン制ではない。)

回復ポーションがぶ飲みゲーに対する一つの回答

戦闘では、行動ポイントになるAPが次ターンに持ち越せる。その際、AP消費量の多い行動を行う(例:高レベルのスペル詠唱)といった行動も取れる。
「攻撃する」「スペルを詠唱する」「装備の付け替え」「回復ポーション(POT)を飲む」といった行動全てにAPが設定され、同一ターン内に持ちAPを消費して行動するため、「1ターン内にPOTを飲み続けてHP全回復する」といったお手軽な回復行動は取れない。

この「AP消費システム」によるPOTの回復抑制は、いわゆる「POTがぶ飲みゲー」に対する一つの模範回答ともいえる。
勿論このゲームでも、多量のAPを消費して回復ポーションを飲み続ければ、同じように1ターンでHP全回復といった行動も取れるが、APを消費させるという代償を用意した事は、ゲームとしてかなりの成果と言える。

また、「炎」「水」「毒」といった環境要素が戦闘を行っている地形にダイレクトに反映されるため、キャラクターはその影響を利用したり、避けたりしながら戦う必要がある。
例えば、「敵の足元にオイルを撒く」「炎スペルで地表を炎上させる」「炎による追加ダメージを与える」といった環境系攻撃コンボが可能になっている。
これらの要素から、戦闘に関しては極めて戦術的なゲームだと言える。

戦闘はAPによる擬似ターンバトル

ディヴィニティの世界では廃屋やダンジョンの至るところにトラップが仕掛けられている。
スイッチを探して押したりオブジェクトを移動してトラップの上に置いて回避し、仕掛けを解除する等、戦闘以外でも気が抜けない。
オブジェクトが多いだけに、良く画面を観察し、手持ちのアイテムをどのように使えば仕掛けを解除出来るか、というある種パズルゲームのような要素もある。
ただ、パズル的な要素はあるが、ゲーム全体としては飽くまでファンタジーRPGの形式を維持している。

トラップ・仕掛け・謎解きの多いゲーム。一歩踏み出すとそこには死の危険がある

クエストマーカーがないゲーム。マーカーは手動でマップにメモ

戦闘システム以外でも、このゲームでは革新性がある。
その一つは、「クエストマーカーが表示されない」ことだろう。

通常のゲームでは、NPCの頭上に「!」マークが光っており、その人物がクエストに関係があるということが分かる。
あの「!」マークがこのゲームでは表示されない。
「次にどこに行って誰と会え」という、ゲームシステム側からの明確な指針は、このゲームではない。
会話したログの記録、本に書かれた文章、紙に書かれたメモ等、収集した情報とその場の痕跡から、次にどこにいって何をするかをプレイヤー自身が洞察する必要がある。

また、「ある場所が何らかのクエストに関係がある」事がプレイヤーには判断出来ないため、少しでも怪しい場所があれば、マップを開き「この場所に怪しい入り口がある」というように、逐一自分でメモしながら進めていく必要がある。
手動でマップにマーカーをメモしていく作業は、往年のゲームでのマッピング作業に近いものがある。
オリジナルのメモでマップが埋まっていく様子は見ていて楽しい。

マーカーを付ける作業は楽しい

クエストマーカーは、MMORPGで始まった悪しきゲームの因習だと思うが、これがないだけでゲーム内に自由度がもたらされているように感じる。
実際、このゲームでは極端にゲーム側から与えられるヒントが少ないため、一歩街の外に出ると直ぐに強い敵が出てきて全滅ということも珍しくない。
しかし、情報を地道に集めてクエストの導線を拾って行けば、必ず核心に迫れるようになっている。
そして自力で仕掛けを解除し、謎を解いた時のカタルシスは、言葉では言い表せないほどの感動がある。

ダンジョンの最奥で核心に迫り、クリアしたときの快感!

また、「Falloutシリーズ」のように、「スリ」「盗み」「街の住人を殺す」といった悪事を働くことも出来る。
モラルを背徳する行為には高い代償が付くが、それでも行うかどうかはプレイヤー次第だ。

「アイテムを盗む」行動が表示。ディヴィニティの世界では殺人や窃盗も可能。

上記のように、オールドライクな見た目に反して、システムは革新性に満ちており、非常に自由度が高いゲームとなっている。

ゲームのデメリット

ゲームのデメリットとしては、ゲーム内のわずかなチュートリアル以外では、ヘルプサイトも英語のみで、プレイに必要な情報が得にくいことがある。
ゲームを進めるため、最低限の情報が書いてある冊子に『キャラクタービルドガイド』があるが、このガイドは一部のECサイトで購入した場合に付く特典になるため、それ以外の購入ルートではガイドを入手出来ない。
そういう事情を理解せず、ゲームを購入してプレイをすると、ヒントなしで全滅する「無理ゲー」と思われてしまうかもしれない。

一見すると取っ付きが悪く、コアゲーマーでなければ手を出し辛いソフトに思える。
ローカライズしたスパイクチュンソフトもその点は分かっているようで、事前にプレイ動画などを公開していた。

しかし、一度はまるとこれ以上ないほど面白くスルメゲーの典型のようなゲーム。面白いと感じる人には堪らないゲームになるはずだ。
そして、何度全滅しても諦めず、ディヴィニティで試行錯誤を楽しんでもらいたい。

その他の評価点

高評価の項目 低評価の項目
  • 装備によって外観が変わる。
  • BGMは牧歌的で雰囲気がある。
  • 英語音声(日本語字幕)であり、言い回しが面白く世界観が楽しめる。
  • ゲーム内のオブジェクトへの干渉制限がゆるく、オブジェクトを「移動」したり、画面内にスタック(積み重ね)することが出来る。
  • 環境と攻撃手段(武器や魔法)の属性の関係が単なる弱点でなく、環境的な関係になっている。「オイルを撒いて」「火を付ける」ことで、単に炎魔法を打つよりも大幅なダメージの増加を与えることが出来る。環境と属性の関係を利用して、戦術が奥が深いものになっている。
  • 一部のクエストは時限制でありリアル感を出している。例えばサイシールの港町に着いて直ぐに船が火事になっていて、街を悠長に散策していると船が火事で燃え尽きてしまう。迅速に火事を消し止めると多くの経験がもらえるなど。
  • 仕掛けやパズル要素が多く、攻略にプレイヤー自身の謎解きや機転が問われる。ゲーム内のリドルや謎に対して解法が多く、手段も多彩で個性的だ。開かない扉に入る方法一つを取っても、「鍵を探す」「鍵を開ける」「扉をぶち壊して入る」など色々な選択肢がある。操作出来るオブジェクトの多さがこのゲームを豊かにしている。
  • 選択肢や行動によって起こった結果に対し、キャラクターの発言を選択することが出来る。例えば、ある傷付いた荷馬から、傷を癒す方法を探してくれという依頼を受け、結果ゲーム内でブラッドストーンという宝石を見つける。そこで、荷馬に宝石の力を使って癒すことも出来るし、荷馬を殺して安楽死させてもいい。この結果、主人公たちは、可哀想な荷馬を助けるべきだったのか、ブラッドストーンを使わない事が正しかったのか、互いに議論する事が出来る。また、主人公同士や、NPCとの間で、互いの主張を押し通して議論で決着が付かない場合、じゃんけんで決めることになる。このため、このキャラクターはこういう考えで行動している、という擬似的なロールプレイが出来、ソロプレイでもテーブルトークのような雰囲気が楽しめる。
  • クラスの制限や縛りが緩いので、ビルドの幅がかなり広い。例えば、「重装鎧を着た魔法剣士で、戦闘ではファイアボールを敵の真ん中に撃ち込んだ後、両手剣を持って敵に突っ込む」という厨二的なキャラクターも(有効かどうかはさておき)可能になる。
  • 決してハクスラのゲームではないが、戦闘や宝箱、意外な場所からの発見など、アイテムの入手頻度が多く、高性能なアイテムもランダムで入手出来るためハクスラ的な楽しみもある。戦闘後に敵を漁っての鑑定タイムは最高の時間の一つだ。
  • 一度レシピで作ったアイテムは複数一度にまとめて作成が可能。
  • 一見不親切なゲームのように思われるが、プレイアビリティについてはむしろ親切設計を意識しており、例えば、鑑定のないキャラが鑑定をしようとすると、「鑑定を所持している別のキャラクターが代わりに鑑定」してくれる。これはプレイヤーから見ると操作的には「アイテムを鑑定」しているだけで全く同じなのだが、アイテムを持つキャラクターでなく、鑑定が出来るキャラクターが代わりに鑑定して回答してくれている。「修理」についても同じ。また、「地面を掘る」場合にショベルを所持していないキャラクターが掘ろうとすると、マジックポケット(共有エリアみたいなもの)を使ってショベルを借りたというようなメッセージが出て、ショベルの受け渡しをプレイヤーの操作なしで勝手に行って掘ってくれる。このように、意外に親切設計な部分が多い。
  • インタフェースの配置が悪く、プレイ画面を遮ることが多い。会話インタフェースが画面に大きく前に出るレシピを覚えたときにポップアップメッセージが前面に出るなど。プレイを遮らないよう、画面端に出すなどの工夫が欲しい。
  • オプションで全部オフにしても、コントローラーの振動を止められない。例えば金貨を見つけた時にも振動があり、プレイしていてかなり不快になる。
  • ゲーム内は全日本語化されているが、日本語音声がない。(個人的には不要だが日本向けなら必要だという人もいるだろう。)
  • ヘルプを開くと英語なので、英語が読めない場合は敷居が高くなる。また、オンラインガイドはあるが、ゲーム中のTipsを記しただけのお粗末なものである。キャラクタービルドガイドを入手出来れば詳細な説明が得られるが、ガイドは事前に特定の店で予約購入した場合のみ特典として付いてくるのみ。最低でもPDFでネット公開すべきだったのではないか。
  • アクションゲームではないので、仕方ないかもしれないが、動きがややもっさりしている。特に移動の遅さはストレスが溜まる原因になる。
  • キャラクターは主人公のソースハンターを二人使え、作成画面時に二人分をクリエイト出来るのだが、方法に気付かないと一人分しかクリエイト出来ないように錯覚してしまう。(クリエイト画面で名前を合わせて十字キーで左右のキャラクターに入れ替えることが出来る。)
  • 毒の沼地を攻略するには、まずスイッチを見つけて床に炎を発生させ、次いでレイン魔法を唱えて水浸しにして床を安全にさせて進めないといけないなど、進行が普通のゲームに比べてかなり段取りが必要。また、一見無意味な場所にも地雷や爆弾のスイッチがあり、サクサク進めたい人には向いていない。
  • 敵のAIが長考する場合がある。通常は直ぐに動くが、まれに1分前後考えていることがある。
  • 敵のAIが無駄な動きをしていることがある。一旦画面奥に動いて回復魔法を掛けた後また元の位置に戻るなど。
  • セーブデータが一杯になった後、不要なデータを消して新たなセーブ枠を確保しないと行けない。PS4ハードディスクは十分に空きがあるので、セーブ枠はソフト側の問題。セーブデータは「日時でソートして古いものを上に来させる」ことが出来ない。また、「複数をまとめて消す」ことも出来ない。そのため、セーブ枠が一杯になると、「毎回一番下までカーソルを動かして古いデータを一個ずつ消す」という余計な作業が発生する。
  • 戦闘ではレベル差が極めて大きな影響があると思われる。敵のレベルが高いと敵に抵抗されやすく、敵からのダメージも受けやすい。敵のレベルが低いとこちらのスペルに簡単にかかる。これではレベルを上げるだけで全てが解決してしまい面白くない。パラメータが多種あるのに、単なるレベル差ゲーになっているのは残念。
  • 精神系の魔法(ラプチャー「魅惑」など)が強すぎるため、中盤からは「これさえ打っておけばいいゲーム」になっている。
  • ライティングを調整出来ないため、暗い場所でほとんど何があるのか見えないことがある。(終焉の時など)
  • バグが比較的少ないゲームだが、後半深刻なバグがあった。ウルグラフというNPCが口が利けないのだが、後半治療するアイテムを作ることが出来る。が、この時点でパーティーに入れていないNPCは英雄の神殿という場所に強制移動する。英雄の神殿には常時隕石が降り注いでおり、突っ立っているNPCにも少しずつダメージが蓄積されていく。この状況を見てNPCが死ぬかもしれないとは思ったが、復活の魔法もあるため、そのままにしていた。そしてウルグラフを治療出来るようになり英雄の神殿に行くと、ウルグラフが立っていた場所には服だけしか残っていなかった。死んで倒れている残骸があればそれに対して復活の魔法をかけることが出来るが、それすら出来ず、このためウルグラフ関連のクエストは全て止まってしまう。

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