ゲームレビュー NieR:Automata(ニーア オートマタ)「横に狭く縦に深いゲーム構造を持つ唯一無二のゲームデザイン」【PS4】

ゲームレビュー NieR:Automata(ニーア オートマタ)「横に狭く縦に深いゲーム構造を持つ唯一無二のゲームデザイン」【PS4】

PS4『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』のゲームレビューをアップします。
ニーア オートマタでは周回システムを採っており、筆者は周回途中で真EDまではプレイを終えていませんが、直近でこのゲームを真EDまでプレイすることが難しい状況なので、この時点でのゲームレビューになりますがご了承下さい。

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初めに、NieRシリーズについてはヴィジュアルコンセプト等の確固とした世界観が前提にあり、ある種振り切った世界観なので人によってはっきり好きかどうか出るタイプのゲームと言える。
その点からレビュースコアを付けることには余り意味がないタイトルだと感じる。
筆者はNieRシリーズはプレイしておらず『NieR:Automata』が初プレイで、話題になった大型タイトルだった事や事前にプレイ出来た体験版のインプレが良かった事から製品版を購入した。
体験版のプレイレポでは「間違いなく買いの作品」とまで言い切っていた。そのくらい体験版のインプレは最高だった。

その後製品版を購入し、特に世界観に対する前提知識等がない状態でプレイを周回した。
NieRは舞台などゲーム外のマルチ展開もされているが、ゲーム外の情報は全く得ていない。
このゲームに関してはその程度の理解とご承知頂いた上で以下ゲームのインプレと評価を書いていく。
※周回、エンディングパターンを含む本編のネタバレが記事本文中にあります。

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レビュースコア

ゲームタイトル スコア ランク 評価観点
ニーア オートマタ(NieR:Automata)

8/10 A
  • メカニクス(アクション・操作性・戦闘)
    7/10
  • 世界観・ストーリー・登場人物
    7/10
  • グラフィック・モデリング・画面UI
    8/10
  • サウンド・BGM・音響効果
    6/10
  • インプレッション・熱中出来る要素
    6/10
  • クオリティ(バグ・ロード時間 etc)
    7/10
[寸評]
ニーア オートマタでしか表現出来ない世界観、キャラクター造形、心理描写に加え、美麗なUIやカットシーン、スタイリッシュな戦闘ムーブ、シーンによって変化するゲームモード。システム面でもAAAタイトルに相応しい作品と言える。半面非常に独特な世界観とキャラクターデザインから、この世界によりディープに入れるプレイヤーは楽しめるだろうが、入り込めないプレイヤーには取っ付きが悪いかもしれない。
フィールドは一見オープンワールドのようになっているが、周回システムの関係からか物理的に探索可能なエリアはそれほど広くない。
何度も世界を周回することでストーリーの真相を明らかにしていくという「横に狭く縦に深い構造」のゲームになっている。
この事からプレイする人によって大きくプレイフィールが変わる可能性も内包しているが、唯一無二とも言える世界観とスタイリッシュな戦闘、周回により真相を徐々に明らかにするというゲームシステムをNieR:Automataという一つのタイトルとして結実させたのは、ゲームデザインとして非常に高い評価が出来るゲームなのではないかと感じた。

2022/10/26変更履歴 評価観点の記載を新形式に変更。その他の評価点を若干修正。

  • ジャンル:アクションRPG
  • プレイ人数:シングル
  • プラットフォーム:PlayStation 4,Nintendo Switch, Xbox One, Windows(Steam)
  • 発売日:2017年2月23日(PS4)/2017年3月17日(Steam)/2018年6月26日(Xbox One)/2022年10月6日(Switch)
  • 開発:スクウェア・エニックス/プラチナゲームズ
  • パブリッシャー:スクウェア・エニックス

レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。

総評

遥か未来の世界。ヨルハ部隊のアンドロイド兵士「2B(トゥービー)」と「9S(ナインエス)」は、 地球を制圧している機械生命体と戦う。
ゲームには人類(人)は登場しない。地上に人類の生きていた形跡が残っているのみである。
これは人間がいない世界で人間を問うアンドロイドの物語だ。

機械生命体と戦うアンドロイド・2B

戦闘シーンは非常にスタイリッシュだ

個人的には冒頭に書いたようにシリーズ作の『ニーア ゲシュタルト』『ニーア レプリカント』等をプレイしておらず、世界観やプレイフィールは初めてとなる。
序盤のバンカー(月面基地)のシーン、地球へ飛行ユニットで降下するなどハード寄りのSFの世界観を予期させるものだが、実際にはメインストーリーで敵となるアンドロイド兄弟(アダムとイヴ)の読む絵本の挿入カットシーン等がエモーショナルなシーンや或いはメルヘンな絵本のような内容が挿入され、その文は哲学的な内容で人間とは何かを示唆するものとなっている。

2D視点で戦うモード

俯瞰視点で戦うモード

敵の超巨大機械生命体とのバトル

飛行ユニットの格好良さ

顕著なのは序盤に機械生命体たちがパレードをしている「遊園地」だろう。
ある意味可愛いとも言えるデザインの機械生命体たちが遊園地でパレードをしているシュールなシーンだが、ゲーム内ではこのような機械が人間の真似ごとをしているシーンが何度も現れる。
その問いはヨルハ・スキャナータイプで思索好きなアンドロイドの9Sにより何度もゲーム中に発せられるのだが、答えは1周目のプレイでは出ない。
(1周目の主人公2Bはヨルハ・バトルタイプアンドロイドのため、「このような問いは考えるだけ無駄」という態度を取っている。)

飛行ユニットに搭乗してボス敵とのバトル

9Sのハッキングシーンではシューティングモードに切り替わる

飛行ユニットでのシューティングモード

ドラマティックな演出のカットシーン

『NieR:Automata』では周回プレイシステムを採っており、これらの問いに対する断片的な答えが2周目のプレイでようやく語られ始める。
更に2周目でも物語は完結せず、その回答は3周目、4周目というように引き継がれていく。
そのため、世界観や存在に対する謎の答えを得るには周回プレイが必須となっている。
周回プレイ自体に積極的に物語の深度という意味を持たせるのは余り例がなく、ゲームの構造的にも興味深い試みとなっている。

或いは、本格ミステリで島田荘司が提唱した「冒頭の奇想と論理的な帰着」のフォーマットに則ると、1周目の2B視点が「謎の提示編」、2周目の9Sが探偵となり謎を調査する「解決編」ということも言える。
9Sは「スキャナータイプ」という設定であり、ヨルハ部隊のサーバー装置などにも入れるためこのような役回りが可能となっている。 一方でアンドロイド部隊に特徴的なゴシックロリータファッションのような外観・服装にオーソドックスなSF的な世界観を持っているプレイヤーにはこの世界のアンドロイドは風変わりに映るものになる。

序盤のフィールド 朽ちたビル群と長閑な風景が対照的

レジスタンスの拠点を発見

砂漠地帯 照りつける太陽と見渡す限りの砂にアンドロイド2体が呆然と佇む

湖で釣り 大物が狙えるか?

以下で個別にクローズアップした観点について印象を述べる。

個別の観点

  • アクションと移動
    主人公の機動性が高く、ダッシュ、ジャンプ、2段ジャンプ、ジャンプ中ダッシュ、ジャンプからのポッドに掴まり滑空、とスピード感のあるアクションが可能。
    主人公本体の速度も速いが、更に動物をテイムして乗ると高速移動が可能になる。
    遠距離ではアクセスポイント間の端末転送も可能で移動にストレスを感じる要素はない。
  • 戦闘
    戦闘では敵の攻撃をガード出来ない代わりに被弾する直前に回避すると無敵状態で回避出来るジャスト回避がある。
    戦闘ではジャスト回避が確実に出せるかどうかがポイントになる。
    ただ主人公がアンドロイドという割には体が軽く、自重を感じなかった。
    個人的にはもっと剛性、重量感があっても良かったように思う。
    スピード感が速い分、目まぐるしく視界が変わるので酔いやすい人も出るかもしれないが、個人的には問題なかった。
    攻撃は小攻撃・大攻撃の近接武器2種類とポッド通常攻撃、ポッド特殊攻撃のポッド攻撃2種類があり、ポッド特殊攻撃は武装を変えることで用途や敵に合わせて変更していく。筆者の体験版プレイ動画

  • テーマ
    アンドロイドと機械生命体が戦う未来の地球がテーマだが、世界観として骨太なものは余り描かれず、どちらかというと機械生命体の奇妙な生態や振る舞い、変わったキャラクターが描かれることに主眼が置かれている。
    2Bたちアンドロイドは人類のために戦う人間側だが、人間でも機械生命体でもない「アンドロイド」の目を通して機械生命体の奇妙な生態系が描かれている。
    人類は一人も登場しないが、かつて住んでいた人類の住居が廃墟となって残っており、そこからもアンドロイドは人間の生活を想像して羨ましいと思ったり、人類は変わっていると感想を述べたりする。
    主人公たちアンドロイドは何故かゴシック・ロリータのような変わった外見・服装をしている。最前線に身を投じる兵士でありながら知覚の重要器官である目の部分を覆っている。
    地上にいる敵の機械生命体のデザインも絵本に出てくるような可愛らしいデザインとなっている。
    ゴスロリファッションのアンドロイドたちと可愛らしいデザインの機械生命体が戦いを繰り広げる一風変わった世界観になっている。
    地上に降り立ってからはレジスタンス村を拠点にごく普通のRPG同様依頼やクエスト、時にはバンカー(月にある人類の拠点基地)からの指令をこなしながらストーリーを進行する。
  • システム的な都合を世界観で説明
    このゲームが素晴らしいところはゲームシステムから来る「システム的な都合」を世界観で説明しているところだろう。
    例えばファンタジー世界のゲームでもファストトラベルがあるゲームは数多くあるが、完全にシステム的な都合だけであり、ユーザーの利便性を考えてのものだ。
    だが、『NieR:Automata』の端末転送では「義体が各地のアクセスポイントにあって個体データを転送している」という説明が為される。
    (厳密にいうと物理的な移動のファストトラベルでなく「データを送信することで同期している」という設定。)
    恐らくファストトラベルが可能なことに何らかの物理的な理由で説明を付けたのは『NieR:Automata』が史上初めてのゲームではないだろうか。
    ミッションやクエストでマップにマーカーが付くのはちゃんとポッドやオペレーターが処理するという描写がされている。
    強化要素のチップはストレージの拡張が必要でストレージ内にどのように配置するかはカスタマイズ出来る。
    これらはファンタジーRPGなどのゲームでは世界観的に有り得ないため、ゲーム的なシステム要素としてプレイヤーのみが関与しているものだが、『NieR:Automata』ではゲームシステムな部分を世界観で説明を付けている。これはこのゲームの世界観だからこそ可能になったことだ。
    マップは衛星から受信しているという設定で、高低さも表現されシンプルだがとても見やすいマップになっている。

問題点

  1. 主人公たちアンドロイドに剛性や自重を感じない
    ゲームの操作やシステム的な問題点として感じたのは、移動のところで書いたが主人公たちアンドロイドに剛性や自重を感じないこと、動作が少し軽すぎること。アンドロイドらしくもっと剛性感、重量感が欲しかった。
  2. ボリュームが少ない
    筆者は一周目を40時間あたりでまだ全体の半分を超えたあたりだろうと思っていたが、もう終盤でボス戦まで一直線だった。
    シナリオも1周目だけでいうと空母防衛ミッションから終盤までが早いのでもっと中盤での展開が欲しかった。
    1周目でクリアしても説明されていない謎や未消化のフラグもあった。
    これは周回でシナリオが変化するということが説明されるため、周回が前提のボリュームになっているためだが、もっと1周分の物理的なマップやシナリオの密度を高めた方がいいと感じた。
    この手法だと探索可能なエリアが少ないことへの不満や、2周目以降をしないと謎が明かされないことに不満を抱くプレイヤーも出てくるからだ。
  3. TPS以外のモードでの操作のし辛さ
    『NieR:Automata』の大きな特徴がゲームのモード自体が可変的な要素がある点で、TPS、2D、俯瞰、シューティングモード、ボス戦と形態がシーンや状況によって変化することだ。
    通常はTPSだが飛行ユニットではシューティングモードなど大きくプレイフィールが変わる。
    TPSでは他のゲームとそれほどプレイフィールは変わらないが、2D、特に望遠のようにキャラクターが小さくなる時は非常に操作し辛い。
    ボス戦でのシューティングモードも微妙に移動方向に偏向がかかるため操作し辛かった。
    このゲームに関しては純粋にTPSだけで完結して良かったように思う。
    2Dがシーンとして不可欠という場面はないと思われたし、飛行ユニットに搭乗後もTPS画面で戦闘すればシューティングモードも不要だった。
    TPSや2Dなどのゲームモードが複数混在しているため、パスカルの村は構造的にも分かり辛かった。
  4. 物理的に探索可能な場所が少ない
    単純にオープンワールドのボリューム不足でマップで建物自体に入れる場所も少ない。
    廃墟のビル群の「いかにも入れそうな入り口」にも入れない。
    主人公や動物マウント時の移動が速いためマップは直ぐに踏破してしまう狭さ。
    最低でも今の4倍くらいにするか、探索可能な構造物をもっと増やすべきだった。

本稿のまとめ

総評すると世界観、キャラクターの掘り下げ、UI、BGMやボイスアクトは秀逸でアクションもTPS中心にやり応えがあるが、マップやシナリオのボリュームが少ないという印象だった。
しかしこれは空間的な広さではなく周回を前提としたストーリーの掘り下げを狙ったゲームデザインでもあるため、人によって評価が分かれる所だろう。
またテーマとしてアンドロイドと機械生命体の戦いを通じて人間を問う作品であり、表現的には絵本やメルヘンといったギミックを使っているため、オーソドックスなSF世界からはかけ離れているが、間口の狭さの分ほどよりディープに入り込める仕掛けだと感じた。

筆者のクリア時エンディング
冒頭にも挙げたようにレビュー執筆時点で難易度HARDを含む周回3周目までのみクリア済み。(エンディング確認パターン:ABGHKPW)

その他の評価点

高評価の項目 低評価の項目
  • 英語音声、日本語音声両方選択出来る。筆者は英語音声でしかプレイしていないが、ボイスアクターの演技は素晴らしかった。
  • 武器の選択、チップのカスタマイズ、ポッドの選択などで自分の戦闘スタイルを追求出来る。
  • 移動方法が多数あり速度も速くストレスを感じさせない。ポッドにつかまっての滑空は心地よい。
  • 戦闘がスピーディーでジャスト回避によるテクニカルな戦闘も可能。
  • システム的な都合である「ファストトラベル」(端末転送)に義体とデータで説明を付けた点は素晴らしい。
  • 誤字誤植、バグやエラー落ちが全くなく動作が安定している。
  • UIのデザインが美しい。
  • BGMはこのゲームでの最も素晴らしい所の一つで、戦闘、シナリオクリア後の一つ一つのBGMが印象的。
  • ミッションやクエストの結末がバッドエンドと呼べるような意外なものが幾つかある。
  • マップに何かありそうな場所は「???」で表示されるため現地に行く前からネタバレになっていない。
  • 空気や砂、光といった環境効果の表現が美しい。
  • 操作するアンドロイドに剛性感、重量感、自重を感じず動作が軽すぎる。
  • アンドロイドの概観や武装への疑問。「最前線に赴く戦闘用のアンドロイドが何故そのような外装(ゴシックロリータファッション)や目を覆うファッションをしている理由」「アンドロイドが銃を使わず近接武器を主武器に使っている理由」等の説明がされず疑問が残る。通常は「ゲームだから」という理由で片付けられるが、このゲームの場合、それ以外のシステム的な都合(ファストトラベルが可能な理由)はキャラクターによって説明されるため、「説明されない不可解」「システム的な都合を世界観で説明を付けられる」という状態で一貫性がないと受けとられてしまう。一応、周回のミッションによっては強襲用のスーツに身を包むシーンもあるため、本来はその方が自然なように思う。販促の話を抜きにするとアサルトスーツで出撃するが、スーツが壊れてしまったか使えなくなりスーツを脱ぐという設定でも良かったように感じた。
  • 周回を前提としてストーリー構成しているため、マップやシナリオのボリュームが比較的少ない。エピソードの確認も含めると周回を見るのに何周もしなければならないため面倒。
  • ステージや建物の構造上、内部に入れず屋上にも上がれない場所が多い。
  • 設定や舞台は面白いが、ミッションやクエストは「お使い」「NPCエスコート(護衛)」など通常のRPGと同じようなものが多い。
  • 通常操作のTPSに比べ、2Dモードや俯瞰(シューティング)モードでは操作がし辛い。
  • 地上にいる動物が数種類しか出てこないのは生態系として不自然。世界観の説明をするならゲーム内で言及すべきだった。
  • 9S操作時のミニゲーム「ハッキングモード」がそれほど面白くない上、頻度が多い。周回時の後半では特にハッキングの頻度が上がるため、ストレスを感じる時間が長かった。
  • ゲームを進めていくと分岐の選択肢があるが、セーブ枠が3つとやや少ない。
  • バンカーが破壊された後も端末転送(ファストトラベル)が可能な点は不自然に感じる。このゲームのファストトラベルは「義体が各地のアクセスポイントにあって個体のデータを転送しているため可能」といった説明がされるが、それには義体がアクセスポイントに常時配備される事が前提になる。しかし、月面のバンカーが機能不全になった後半では義体を修理、オーバーホール可能なのはレジスタンスキャンプに常駐するアンドロイドだけになる。彼らだけで広大な場所の全義体をメンテナンスし続ける事が出来るのかは疑問。バンカー破壊後は、端末転送は不可能とし何らかの代替手段を提供すべきだったのでは。

 

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