真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER ゲームレビュー「リマスターとしては物足りないが女神転生としての面白さは健在」【PS4】

真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER ゲームレビュー「リマスターとしては物足りないが女神転生としての面白さは健在」【PS4】

『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER』(PS4版)ストーリークリア後の総評とレビュースコアを掲載します。
※難易度HARDで初見一周目クリア。DLC適用なし。
※購入価格はパッケージ版購入(4,400円)。
※株式会社アトラスに関わる画像の著作権、その他一切の知的財産権は、全て株式会社アトラスに帰属します。

SPONSORED LINK

レビュースコア

ゲームタイトル スコア ランク 評価観点
真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER
7/10 B
  • メカニクス(アクション・操作性・戦闘)
    7/10
  • 世界観・ストーリー・登場人物
    7/10
  • グラフィック・モデリング・画面UI
    6/10
  • サウンド・BGM・音響効果
    8/10
  • インプレッション・熱中出来る要素
    6/10
  • クオリティ(バグ・ロード時間 etc)
    6/10
[寸評]
リマスター版の制作に当り開発会社のアトラスの力量から考えると、技術力を出し切った内容とはとても思えないが、それでも女神転生というベースの世界観・システムが圧倒的に優れているため、多少の不満点はあっても十分に楽しめる。
特にボス戦では、敵の攻撃をギリギリで凌ぎながら、乾坤一擲の攻撃を通した時の手に汗握るカタルシスは堪らない。
自分の選択が世界の趨勢を左右するヒロイックな世界観、悪魔を交渉して仲魔にし自分だけのパーティーを作り上げるなど、シリーズ特有の要素も健在。
ゲームテンポの悪さやモデリングの古さなど気になる点はあるものの、PS2でオリジナルの真・女神転生Ⅲをプレイした元ユーザーは勿論、リマスター版から女神転生シリーズに入る新規ユーザーのどちらも楽しめる内容になっていると思う。

2022/6/7変更履歴 評価観点の記載を新形式に変更。

  • ジャンル:RPG
  • プレイ人数:シングル
  • プラットフォーム:PlayStation 4,Nintendo Switch, Microsoft Windows
  • 発売日:2020年10月29日(PS4)
  • 開発:アトラス
  • パブリッシャー:アトラス

レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。

総評

『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE(以下真Ⅲ)』は2003年にPS2で発売された。2020年にPS4で発売された『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER(真ⅢHD)』は、新ダンジョン「アマラ深界」等の追加要素がある『真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス クロニクルエディション』に準拠した内容となる。

真ⅢHDの主な追加要素はグラフィックのHD化、フルボイス化等
https://www.atlus.co.jp/news/13951/

自分のメガテン歴としては、SFC版真・女神転生Ⅰ・Ⅱ、3DS版Ⅳ、ⅣFinal、STRANGE JOURNEYはプレイ済みだが、クロニクルエディションが発売された2008年当時の自分はPCゲーをプレイしており、CS機のゲームは全くプレイしていなかったため、Ⅲに関しては今回の『真ⅢHD』が初プレイになる。他スピンオフのデビルサマナーやソウルハッカーズ等も既プレイ済みだ。

2021年にプレイするPS4ゲームとしてはかなり物足りない真ⅢHD
真Ⅲについては、恐らくPS2版発売当時は非常に面白いゲームだったと思うが、2021年にプレイするゲームとしては物足りない内容だった。リマスターされたとはいえシステム面で目立った改良点はなく、ゲームメカニクスの面で今見ると古い部分が目立った。ある意味最新ハードでのリメイク機会だったが、「名作真Ⅲをフルリメイクでユーザーに届けたい」という開発会社(アトラス)の真摯な思いは感じ取れず、無難なリマスターになっていればそれで良いというのが今回の着地点だったように見受けられた。

プレイしていて一番不満に思ったのは、暗転が入る場面が多く、プレイテンポが微妙に削がれる事や、俯瞰カメラ時に操作性が悪い事だ。
ターミナルでの移動・セーブ後の演出もキャンセル出来ず、毎回最後まで見る事になる。
ボスや魔人戦闘などでのムービースキップも不可。
PS4・PS5のゲームテンポが当たり前の現在では、テンポが悪いと感じるユーザーは多いだろう。

カメラ視点については、ダンジョンエリアではTPSだが、一部エリアは俯瞰カメラ固定になり、主人公が小さく表示されて回りに何があるか分かり辛い。カメラは全エリアでTPS画面にした方が自然にプレイ出来たように思う。
アイテム売買や邪教の館でも画面の表示はもっさりしている。悪魔合体は何度も試行錯誤する事になるため、もう少し早く表示させられなかったのかと思う。

真・女神転生Ⅰを踏襲した地上マップ

封鎖された代々木公園前で佇む謎の男

クラスメイトたちと先生が入院している病院へ向かう

屋上で先生を見つけるが様子がおかしい

サイバース・コミュニケーション社の氷川 世界の刷新を唱える彼の目的とは

戦闘はいつものプレスターン そろそろ別のシステムにしてはどうか
戦闘では敵味方が向かい合って表示され、攻撃やスキル使用でアニメーションされるので最初は感動するが、数歩歩いただけでも連続エンカウントする戦闘回数が非常に多いゲームなので、雑魚戦の多くでAUTO(高速戦闘)を選ぶ事になる。ただ、AUTOを選んでも逐一アニメーション処理が入るので、もっと速く戦闘を表示して欲しかった。
これらは何れもハードスペックが上がった事で問題なく処理出来たはずだが、特に修正はされず結果としてプレイテンポが悪いと感じる原因になっている。

突如起きたカタストロフィ「東京受胎」で悪魔になってしまった主人公

異世界と化した病院には多数の悪魔が待ち受ける

戦闘画面 アイコンを消費して攻撃や行動を行うプレスターン戦闘

異世界で主人公に話しかける謎の人物たち

病院から外に出ると変わり果てたシンジュクが広がっている

戦闘は敵の弱点を衝くと行動回数が増える「プレスターンシステム」。実装当時は中々斬新なシステムだったと思う。プレスターンについても梃入れはなく真ⅢHDでもそのまま実装されている。
個人的にはプレスターンは3DSの真・女神転生シリーズで何度もプレイしており、魅力は感じていない。同じシステムをずっとシリーズで続けているので、正直またかという感想だ。そろそろ別の戦闘システムを考案してもいい頃だと思う。

DLCを前提としたバランス調整はやめて欲しい
エンカウントが非常に多いゲームだが、戦闘で貰える経験・マッカは少ないため、何度も戦闘を繰り返さないとマガタマ等の高価なアイテムは買えなくなっている。が、DLCを購入すると経験やマッカを楽に得る事が出来るようになっている。

真ⅢHD DLC一覧
http://shin-megamitensei.jp/3hd/dlc/

DLCを出す事は否定しないが、DLCを前提として本編で得られる経験や金を低く設定しているのであれば、バランス調整としては疑問が残る。DLCの特典は時間を金で買いたい人のためのものであって、本編だけで攻略したい人に影響を与えるべきではない。

良リマスターとは言えないが女神転生としての面白さは健在
結果としてリマスターとして無難な出来とは言え、良リメイクとはややいい難いゲームに落ち着いてしまった。アトラスは本来リメイクに力を入れる体質の会社。『真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY』『新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女』『新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士』では、それぞれ新要素が導入されるなど力の入ったリメイクが行われていた。しかし、真ⅢHDでは(リマスターとは言え)そこまでのインプレッションがなかったのは残念だった。

それでも自分のように「シリーズファンだが2008年当時にオリジナルをプレイしていないユーザー」や、「シリーズ作を全てプレイしていてHDリマスターでも再度楽しみたい」というユーザーには、多少の不満点を補って余りある面白さが保証されたゲームだと思う。
更に言えば、PS4でプレイ出来る女神転生シリーズは(ペルソナを除くと)2021年現状でこのゲームしかなく、女神転生シリーズを全くプレイした事がない人には、リマスター版が出たこの機会にぜひお奨めしたいゲームでもある。

また、願わくばこのリマスターを足掛かりに、『デビルサマナー』『ソウルハッカーズ』『葛葉ライドウシリーズ』等の名立たる名作も、PS4/PS5リマスターの嚆矢となってくれれば、ファンとしてはこれ以上の喜びはない。

悪魔と交渉して仲魔を増やしパーティーを強化する

悪魔交渉ではマッカを始め様々な金品を要求される

仲魔の悪魔が交渉を仲裁してくれることも

悪魔との出会いと別れ 思い入れのある悪魔ほど寂しい

女神転生特有のシステム「悪魔合体」も健在

ケルベロスの合体後は御馴染みの台詞で挨拶

カグツチが最大の時にはイケニエを捧げることで合体に更なる変化が

渋谷駅ハチ公前交差点 ある悪魔を待ち続けるデカラビアの姿が

ディスコではネコマタと「いいこと」をしてみるチャンス

デビルサマナー「葛葉ライドウ」の姿が

今作の中心装備になる「マガタマ」 装備することで様々なスキルを覚えたり効果を発揮する

ステータス画面

ダンジョンとマップ画面 多くのダンジョンは複雑な構造をしている

老婆に連れられる謎の少年

受胎後のトウキョウに生きるマネカタたちのリーダー「フトミミ」

アーケードゲーム「パズルボーイ」非常に難易度が高いがクリアするといいことが

購入に迷っている方向けの情報

真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTERってどんなゲーム?

真・女神転生シリーズのナンバリング3作目のリマスター。崩壊した東京を舞台に悪魔になった主人公が様々な試練を生き抜いていくRPG。
視点はTPSだがオープンワールドではなくダンジョンがメインになる。

このゲーム面白いの?

シリーズに歴史があるゲームで、特有の世界観やシステムから熱狂的なファンがいる。
敵の悪魔と交渉してパーティーに引き入れたり、合体して更に強い悪魔を作ったりと、パーティーの自由度が高い。

このゲームいい点と悪い点は?

いい点:女神転生特有の世界観やシステムが楽しめる。BGMが良い。
悪い点:暗転が頻繁に入りテンポが悪い。カメラの視認性が悪い。プレスターン戦闘がマンネリ。戦闘回数が多い。

難易度はどのくらい?

ゲーム開始時に選ぶ難易度によってかなり変わる。最高難易度の「HARD」は戦闘の難易度が非常に高く特に一部の魔人戦やゲストキャラとの戦いは死に続けても心を折られずに攻略法を試行錯誤する必要に迫られるだろう。
自信がない人は易しい難易度の「MERCIFUL」がDLCでDL可能。
後半のダンジョンはギミックや仕掛けを解かないとクリア出来ないため、戦闘以外でも相応に難しい難易度になっている。

PS4、Nintendo Switchで出てる?

PS4とNintendo Switchで発売中の他、PC版(Steam)も2021年5月25日に発売される。

ペルソナシリーズと似てるけど?

元々初期の女神転生シリーズはメディアミックス展開されており、先発作品のヒットなどを受けて、女神転生の派生作品としてペルソナが制作された。
そのため両作品のキャラモデリングやシステムは多少似ている部分もあるのかもしれない。
時系列としては真・女神転生の後発がペルソナということになるが、現在は両作品とも直接の関わりは無く、世界観やシステムなどが違う独立した作品になっている。

<女神転生初期作品の時系列>

  • 1987年『デジタル・デビル物語 女神転生』発売(OVA)
  • 1987年『デジタル・デビル物語 女神転生』発売(PC)
  • 1987年『デジタル・デビル物語 女神転生』発売(ファミコン)
  • 1992年『真・女神転生』発売(SFC)
  • 1995年『真・女神転生デビルサマナー』発売(セガサターン)
  • 1996年『女神異聞録ペルソナ』発売(初代プレステ)

他のナンバリングは最新ハードで発売されてないの?

残念ながら発売されていない。
『真・女神転生』『真・女神転生II』はSFCや初代プレステでの発売以後リマスター化なし。
『真・女神転生IV』『真・女神転生IV FINAL』は3DSでの発売以後リマスター化なし。
2021年現在でリマスター化されたのは『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』のみとなっている。(PS4、Switch、Steam)
ただ、本文にも書いたが真ⅢのHDリマスター化や女神転生シリーズのSteam初展開など、直近でアトラスの方針にも変化が出てきているので、今後は多くの作品のリマスター化や最新ハードへの移植が期待出来ると思う。
なお『真・女神転生V』は2021年内にSwitchでの発売予定とされている。

その他の評価点

高評価の項目 低評価の項目
  • 真Ⅰ・Ⅱから見た目は大きく変わったが、女神転生シリーズ元来の面白さは健在。ハードでヒロイックな世界観、交渉で仲魔に出来る悪魔、悪魔を強化する悪魔合体。
  • 世界の異変が起こり、仲間が新しい世界の趨勢を決めるアラインメント(Ⅲでは「コトワリ」)のリーダーになって敵対するというⅠとⅡのフォーマットを継承。
  • メイン作曲家に目黒将司氏等を迎え新たにメタルな音楽世界を構築。特にバトル系BGMはシリーズ屈指の名曲。Fierce Battle等でシャウトが混じりながらのボスBGMはこれまでになく新鮮。
  • 悪魔交渉に決裂しかけても、仲魔のスキルで取り成しや仲裁してもらえるのは面白いシステム。
  • 各ダンジョンには多彩なギミックが用意され、様々な趣向が凝らされていて飽きにくい。(オベリスクタワーの光の玉パズルやカブキチョウ捕囚所の上下反転など。)
  • セーブ枠が多い。(20)セーブ・ロード自体は早い。
  • 悪魔合体時の継承スキルはランダムだったが、自分で選択可能になった。
  • リマスターでフルボイスではないが、かなりの数のボイスが追加された。
  • 深刻なバグ、タイポなどはなく動作は安定している。
  • マルチエンディング。クリア後データからの周回要素。
  • 葛葉ライドウ(デビルサマナー葛葉ライドウシリーズ主人公)がゲスト出現。
  • 真女神転生Ⅰネタがある。(「アニキと呼ばせてください」など。)
  • ストーリー上、先生や友人たちとの関係が重要になっているが、東京受胎(カタストロフィ)前の日常描写やエピソードなどはほぼなく、洋ゲーのような唐突な導入部になっている。
  • 個人的に女神転生は主観視点のダンジョンRPGだと思っているので、TPS視点になった事へは否定派。
  • ダンジョンや部屋に入るたびに暗転やロードが入り、プレイテンポが削がれる。
  • キャラ動作やカメラの慣性が強いため3D酔いがあった。
  • UIが洗練されていない。戦闘中のコマンドが一部しか表示されず、左右キーを押さないとアイテム使用、召喚、会話、逃走等が表示されない。
  • 一部マップが見辛い。カメラが俯瞰で固定されているエリアが幾つかあり、手前から遠くの物にアクセスするのが見辛い。また入れる建物は入り口がわずかに光る程度で表示されるので、やはり見辛い表示に感じる。
  • 店の種類が少なく回復・邪教の館・道具屋・宝石交換くらいしかない。情報収集先はシブヤのディスコとギンザのバーくらいしかなくイベントや施設が少ないのは物足りない。
  • エンカウント率が非常に高く数歩歩いたたけで何度も戦闘になる。一回の戦闘の経験値が低めなので、戦闘回数がかなり多い。中盤以降はエンカ抑制魔法を覚えるため緩和されるが、それまではかなり戦闘が多い。(エンカ抑制しても連続戦闘になる事がある。)
  • パーティーに前衛・後衛(陣形)の概念がない。また、「防御」のコマンドがない。
  • ゲーム中でシステム側の確認メッセージ(○○しますか?)の後、「はい」がデフォルト選択の場合と「いいえ」がデフォルトの場合で表記ゆれがあるため紛らわしい。
  • クエスト状況が表示されないので「今何をしているか」が分かり辛い。直近のゲームでほぼクエストログがあるため慣れてしまっているのもあるが。
  • 本編で金(マッカ)や経験が入り難く、DLCでそれらを入手出来るような形にしている。
  • 主人公が悪魔(魔人)という設定なので仕方がないが、今作は剣や銃(ガン)がないため物理殴りと魔法しか選択肢がなくなっている。その分マガタマでビルドの選択肢があるが、ギアの試行錯誤やビルドといった面では面白みが薄い。
  • プレスターンバトル自体に面白さを感じない。
  • 戦闘をAUTOで高速表示可能だが、AUTOでもモーションが逐一入る。
  • HDを謳っているがムービーの一部をPS2版からそのまま使用している。
  • 敵のテンタラフーやプリンパでPANIC状態になったキャラが勝手にマッカをばら撒いてしまう。銀行等の預ける場所がないのでマッカのばら撒きを防げない。
  • 合体時の悪魔のボイスがない。ボス戦前にボスの台詞ボイスがあるが、一部ないボスがある。(アマラ神殿など。)

ゲームレビューカテゴリの最新記事