ゲームレビュー ウォッチドッグス2(WatchDogs2)「アナーキーなハッキングゲームだがシステム面で物足りなさも」【PS4】

ゲームレビュー ウォッチドッグス2(WatchDogs2)「アナーキーなハッキングゲームだがシステム面で物足りなさも」【PS4】

2016年12月1日発売の『Watch Dogs 2 – ウォッチドッグス2』(PS4版)のゲームレビューを上げる。
プレイ状況は難易度ノーマルでメインストーリーをクリア済み。
ノーマルとはいえ、前作『Watch Dogs – ウォッチドッグス』より難易度がマイルドになっていると感じた。
前作では警察のヘリが追尾してきて後半はかなり難しく感じていたが、今作ウォッチドッグス2ではヘリが追尾してくるシチュエーション自体少なく、脅威ではなかった。

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レビュースコア

ウォッチドッグス2

70点(/100点)

総評

都市管理を行うctOSとブルーム社に対抗するクラッカー集団 ”デッドセック” の一員となり、ctOSや体制側を混乱に陥れるハッキングゲーム『ウォッチドッグス(以下WD1)』の続編が今作『ウォッチドッグス2(以下WD2)』である。
WD1のヒットによりメジャータイトルとなったが、極めてアナーキーでファンキーな怪作とも言える。

ハードボイルドなWD1に対してアナーキーなクラッカーを押し出したWD2
WD1とは世界観やゲームシステムの部分で共通的な部分はあるが、雰囲気が全く異なっており、コアの部分のハッキングも全く新しいゲーム像を提示しているため、別ゲーとはいかないまでも、かなりゲーム性や雰囲気が異なっている。
WD1ではスニークして建物に侵入し重要データを盗んだり破壊するといった従来型のハッキングに加えて、都市インフラをハッキングするなど新しいゲームの提示はあったものの、どちらかというと「ハードボイルドな復讐譚」「ピカレスク」という部分が強く押し出されていた。
突発的におきるイベントも固定的で、「いかにもゲームです」というものばかりだった。

WD2ではまず大前提としてハードボイルドさを払拭し、より体制側に抵抗するクラッカーであるというアナーキーな部分を強調した。
ゲーム開始後直ぐにベイエリア・デッドセックへの入隊試験があるが、入隊後にデッドセックの目的は体制側に対抗してフォロワーを獲得していくことだ、とはっきり伝えられる。一見、細かいことだが、この点で前作とは大きく方向性が違う説明がなされている。

ミッション成功を祝うデッドセック・メンバー

シームレスな動的イベントで没入感は最高
WD1では固定的、静的だったイベントも改良され、WD2ではその多くが動的なものとなっている。
街を歩いているとシームレスにオンラインイベントが発生し、他のプレイヤーが賞金首として逃げ回っている情報がマップ上に表示される。
捕まえるも良し、無視してソロミッションを進めるのも自由だ。
前作と異なる点の一つで、街を単にうろついているだけでもオンラインイベントが発生する。
これはリアルの世界に極めて近い挙動と言える。
「私の世界で起きている事象」に「別の人の世界」がシームレスに関与してくる。
これがWD2では普通に発生することだ。
イベント場所に近付くとオンラインプレイヤーとCoopしたり、或いは追われている犯罪者(これもプレイヤー)を追い詰める集団に即席で加わったりも出来る。
シームレスにリアルタイムでCoopや敵対プレイが発生し、リアルの世界に近い動的なイベントが起きている。

動的なイベント「バウンティハンターアクティビティ」が近くに 参加するもしないも自由だ

WD1からもいい部分は残されている。ミッションを遂行中に突然侵入され、データを盗まれるといった既存のオンラインハッキングなどは健在。
街が生きている。この表現がぴったりくるゲームだ。

データを盗んでいる敵対ハッカーを倒せ

拠点や各所にあるアナーキーなデザインも見事で、ゲームのUIとも融合し一つのサイバーパンクな世界を完成させている。
美術だけでなく、マーカスと仲間のデッドセックや、街の人を座席に乗せて観光地を巡る時の会話でもマイナーな映画の話題が出たりと、何が飛び出してくるか分からないゲームだ。
どこまで会話で作り込まれているんだろうかと、空恐ろしくすらなってくる。

ドラマのワンシーンのようなムービーシーン

実写のようなリアルなムービーシーン

ペインティングに彩られているデッドセックの拠点

まさにハッカーの拠点という感じ

ゲームのアクション自体もソツなく、走る、飛び越える、カバーに入る、近接戦闘する、銃撃戦をする、スマホで自動車を呼び出して運転する、移動しながらオブジェクトをハックして逃げる等あらゆる動作がストレスなくアクション出来る。

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ボットハッキングゲーという新ジャンルを開拓
そして何と言ってもこのゲームの最大の特徴がハッキングをボットで行う点だろう。
ボットはラジコンカーの「ジャンパー」とドローン飛行機の「クワッドコプター」の二種類あり、ジャンパーは地上を走りながら、アームを伸ばして機械へのハッキングも出来る。クワッドコプターは空中を飛行しながらラジコンが届かない場所に侵入出来る。アームこそないものの、クワッドコプターは探索の主力だ。

余りにも「遠隔侵入」が簡単なのでスニーキングが不要かというと、敵拠点のサーバーなどからデータを盗み出すにはフィジカルハッキングが必要であり、これは多くの場合マーカスが現場に赴いて作業をする必要があるため、遠隔操作だけではゲームを攻略出来ないようになっており、ゲームデザイン的な抑制がされている。

ジャンパーとクワッドコプター

侵入の方法はWD1では主人公のエイデン・ピアース自身が行い、ガジェットのルアーで警備の目を逸らす等をして侵入の手助けをしていた。
今作では主人公マーカス・ホロウはどちらかというとボットの操作がメインで、主役はジャンパーとクワッドコプターだ。

但し操作が可能なのは電波が届く部分に限定されるため、マーカス自身もある程度電波を維持する位置を確保しながら操作しなければならないなど、現実的な面も考慮されている。
空中を自在に飛びまわれるクワッドコプターの操作は楽しく、今作は「ボット・ハッキングゲー」或いは「ドローン・ハッキングゲー」という新しい分野を創造したのではないかと思える。

マーカス自身も潜入が可能だが、警備に見つかるリスクが高いので、ラジコンカーとドローンで侵入路を作成してからの潜入になる。
マーカスは戦闘、ハッキング、パルクールを行う強力なキャラクターだが、ウォッチドッグスでは警備に見つかるとまともな戦闘が成り立たず一方的に蜂の巣にされることが多いので、極力マーカスは動かず、ジャンパーとクワッドコプターを駆使して敵の中枢への侵入路を開拓してからの潜入が攻略のコツだ。

伝説のハッカー「Tボーン」レイモンドはWD2に相応しい配役だ

前作WD1とは世界観は共通しているが、雰囲気はよりアナーキーになっていることは前述したが、シナリオ途中から登場しWD1やDLCでもメインを張っている「Tボーン」ことレイモンド・ケニーが出てくる。

Tボーンは伝説的ハッカーで変人というキャラクターで、WD1でもエイデンに協力してくれていたが、今作WD2でもマーカスたちベイエリア・デッドセックに加わり力強い味方となる。
アナーキーな「Tボーン」こそWD2に相応しい登場人物で、粋な演出だった。
これは前作をプレイした者にとっては嬉しい点だ。

実はゲームシステム的に多くを制限された「バットマン・アーカムナイト」に近いゲーム

このゲームについては没入感は最初は高く、ベース部分はよく出来ており、現代的な広大な世界で運転したり各種レースに参加したり、気ままにクエストを進めたり近くにいる仲間とCoopでクエストをしたりPVPイベントに参加したりとオンラインともシームレスにつながって動的な世界を満喫出来る。

しかし、プレイしているとどうしても物足りなくなる場面が多く、それは何故かと考えていたが、「探索・収集・戦闘・成長・会話」というRPGに必要な要素をシステム的な面から省略しているからだと考えている。

探索については、都市やロケーションは広大ながら、「ダウンタウンのあの地区に何があるのか探索しよう」「この廃墟に何があるのか気になるので入ってみよう」といった部分はなく、建物自体も一部のクエストで入れるのみで、内部に入れる場所は少ない。
探索の楽しみという部分はこのゲームにはない。

収集については、インベントリ欄がないことでも分かるが、アイテムを入手したり所有するという面はこのゲームでは重要ではない。
落ちているアイテム(スマートフォンやタブレット)を入手した、とメッセージが出ることがあるが、だからといってそれで何か出来るわけでもない。

何かの設計図を手に入れてアイテムを製作したり強化する、といったことはシステム的にはやっていることになっているが、リサーチ(スキル)取得に必要なアイテムを取るという部分ではそれはあるが、アイテムを取るとリサーチ取得がアンロックされるというだけなので、達成感には欠ける。

サイバー技術を使いこなすエージェントの設定なので、PCやスマートフォンをハックして強化するといったRPG的な要素はこのゲームにはないため、リサーチをアンロックして取得しても強くなったという実感が薄い。

車に関しては基本はカージャックしての乗り捨てなので、所有に関しては他のゲームほど大きくは占めていない。車はオンデマンドで呼び出すのでPVPなどを考えると車両を揃えるのは意味があるが、そこに意味を見出すかどうかは遊び方の話になる。

戦闘についても、このゲームでは簡略化されている。近接戦闘、銃撃戦と両方出来るが、近接戦はAボタンを押すだけで確実に相手に勝てる。テクニック的な要素は必要ない。避けるという動作もない。
ただ、アーマーを着た武装兵などには倒すまでの時間が長くかかるというだけになる。

銃撃戦は、一応狙いを定めて銃撃をヒットさせないと倒せず、通常のゲームに近くなっているが、大抵敵の攻撃力が高く、銃撃戦で包囲を突破するということはほぼ不可能になっている。
敵や警察の車両の追跡力が高く、ヘリの攻撃力も高いため、まともに撃ち合って攻略するのはこのゲームでは非常に難しい。
その分リサーチ(スキル)の威力が強力で、多数の敵を撒いたり包囲を突破したり、警察のヘリから逃れるといった場面ではほぼリサーチを使って状況を打開することになる。

成長についても、ステータス要素はなく、リサーチ(スキル)の取得に留まっている。
上に書いたようにリサーチの威力が強力に設定されている。
近接武器や銃のカスタムも不可能で、拠点にある3Dプリンターで上位の武器を購入するに留まっている。

例えば、アプローチ的にはステータスを設けて、戦闘要素を高くするか、ハッキング的な能力を高めていくか、という部分に成長をフォーカスすることもゲームデザイン的には合ったと思うが、そういった要素を全て省略して、代わりにゲームのテンポを高めた、という感じに見える。

会話については、ミッションに入ると必ずカットシーンでデッドセックメンバーやキーパーソンと会話するため一見、会話でイベントの展開をしていくように見えるが、実は会話で選択肢を選んで展開が変わっていくという要素はなく、プレイヤーがすることはただクエストを選択してキーパーソンやメンバーと会話するというだけで、後はカットシーンが挿入された後ミッションの指示に従って行動を開始する、という流れになっている。
会話の選択によって展開が変わるという要素はこのゲームではない。
会話での選択肢がないため、プレイヤーは展開を選ぶことも出来ず、ただマーカスの考える方針に従っていくだけになる。

これらの要素から、ゲームデザイン的にはプレイヤーが出来ること(選べること)は限られており、筆者にはウォッチドッグス2がバットマン・アーカムナイトに非常に近いゲームだという印象を受けた。

バットマンについても、探索、収集、成長、会話要素でプレイヤーが出来る部分はシステム的に限定されており、展開についてもバットマンの指示に従って淡々と行動していくゲームであり、プレイしていてストレスを感じることが多かった。
また、ウォッチドッグス2はジャンパーやクワッドコプター、バットマンはバットモービルというガジェットの操作が攻略の鍵を握っているので、そういった面でもこの二つのゲームは似通っていると言える。

その他の評価点

高評価の項目 低評価の項目
  • オンラインでシームレスにCoopや敵対プレイが発生する。
  • 乗車可能な乗り物が多く、自動車、バイク(ミニバイクから大型バイクまで)、セーリングボートと多様な乗り物に乗れる。
  • ロケーションが豊かで広大なマップ、大量のミッション。ミッションはサイドストーリーのものからメインミッション、Coopや敵対まであらゆるものがあり、無視してもいいし寄り道してもいいし、メインだけひたすら進めてもいい。(スキルを上げるのに必要なアイテムがあるので、メインだけ進めると重要スキルは上げ辛いが。)
  • 演出や美術が世界観に合ったアナーキーなものである。
  • 多くの重要人物とは会話からムービーシーンが発生する。ムービーシーンも非常によく出来ていて、アメリカのドラマのようである。
  • ラジコン(ジャンパー)とドローン(クワッドコプター)でハッキングするという新しいジャンルのゲームを開拓した。
  • 着こなせる服やアイテムが多い。(帽子、サングラス、トップス、ボトムス、靴、カバン等)
  • バグや不具合による停止がなく、ゲーム中の挙動が安定している。
  • 洋ゲーに多いセーブデータ(データ枠の確保)の煩わしさがない。
  • ロード時間が少なくゲーム起動後のデータロードのみで後はロードなくシームレスにプレイ出来る。
  • 英語音声・日本語訳、日本語音声・英語訳等が可能。
  • バイクを駐車するとスタンドで自立出来る。(2輪でも倒れない)
  • 前作から引き続きのミニゲーム「ネットワークパズル」は作業感が強く面白くない。
  • 都市には建物が多いが入れない建物が相変わらず多い。
  • どういうミッションでも、建物の中枢にジャンパーとクワッドコプターを侵入させて最後にマーカスがフィジカルハッキングするという流れになり、後半にいくほどミッションがマンネリ化する。
  • ゲームのデザイン上、登場人物や背景、ストーリーが詳細に説明されないため「誰に対して何を目的としてその依頼を受けているのか」といったことが分かり辛く、話しに付いていくのが難しい。
  • 「探索・収集・戦闘・成長・会話」というRPG的な側面が薄く、ゲームデザイン的に多数省略されているため、プレイしていて物足りなさを感じる。
  • 車の内部はリアルではなくメーター等の描写がぼやかしてある。PS4版のGTAV(2014年発売)ではアクセルを吹かすとメーターが上がりリアルな描写だが、そういう描写が無い。車やバイクの挙動を、より「リアル」にしてもらいたかった。

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