黄泉ヲ裂ク華 ゲームレビュー「昭和の懐かしさとダークな世界感溢れるディストピア・ダンジョンRPG」

黄泉ヲ裂ク華 ゲームレビュー「昭和の懐かしさとダークな世界感溢れるディストピア・ダンジョンRPG」

『黄泉ヲ裂ク華』(PS4版)ストーリークリア後の総評とレビュースコアを掲載します。
※「黄泉ヲ裂ク華 お手軽版」DL版のストーリーボスクリアまでプレイ時点のレビューとなります。追加シナリオDLC「黄泉ヲ裂ク華 やり込みDLC」は執筆時点で未プレイです。

SPONSORED LINK

レビュースコア

ゲームタイトル スコア ランク 評価観点
黄泉ヲ裂ク華
6/10 C
  • メカニクス(アクション・操作性・戦闘)
    6/10
  • 世界観・ストーリー・登場人物
    6/10
  • グラフィック・モデリング・画面UI
    5/10
  • サウンド・BGM・音響効果
    5/10
  • インプレッション・熱中出来る要素
    5/10
  • クオリティ(バグ・ロード時間 etc)
    7/10
[寸評]
突如東京都内に出現した巨大構造体「黄泉」の内部で資源採掘を行う地下探行士(アンダーノーツ)になり、閉じ込められた黄泉からの脱出を目指す命がけの探索が始まる。
オートパイロットでの自動移動や高速戦闘も完備し、プレイアビリティは非常に高い。
新要素の「ダンジョンビルド」も迷宮を攻略している感があり面白い。
が、トータルで見るとビルド面の物足りなさ、普通過ぎる戦闘システム、一枚絵中心で演出面の弱さ等から、ゲームスコア6/ランクCが妥当な内容だと思う。「黄泉と地下探行士」「昭和レトロ調な世界観」といった要素が好きなので、個人的な嗜好でゲームスコア7/ランクBとした。
2021/10/17変更履歴 甘めに付けていたため、厳密なスコアに修正。レビュースコアを7から6,ランクをBからCに変更。
2022/7/12変更履歴 評価観点の記載を新形式に変更。
  • ジャンル:ダンジョンRPG
  • プレイ人数:シングル
  • プラットフォーム:PlayStation 4/Nintendo Switch
  • 発売日:2020年10月15日
  • 開発:エクスペリエンス
  • パブリッシャー:エクスペリエンス

レビュースコアの採点方法については以下リンクを参照。

総評

PS4/Switch『黄泉ヲ裂ク華』 PV 第二弾

一貫して国産のDRPGを開発してきた「エクスペリエンス(Team Muramasa)」の2020年発売最新作となるダンジョンRPG。
当初はプラットフォームを絞り2020年6月にXbox OneでDL版が先行発売され、2020年11月にPS4とSwitchでパッケージとDL版が発売された。

『黄泉ヲ裂ク華』タイトル自体は2016年に発表され、その時はダンジョンRPGではない和風のゲームとしてイメージボードが発表された。
その後紆余曲折を経て現在のゲーム形式になり、発売に至ったという経緯になった。

2016年5月の4Gamer記事で「黄泉ヲ裂ク華」が取り上げられた。この頃は現在の製品版と異なるイメージだった

Xbox One用新作RPG「黄泉ヲ裂ク華」が2017年春に登場。PS Vita用ダンジョンRPG「新釈・剣の街の異邦人 ~黒の宮殿~」も2016年7月21日に発売決定

■黄泉と地下探行士という最高の舞台設定
筆者はDRPGは真・女神転生や世界樹の迷宮等のシリーズ作を数多くプレイしているが、これまでエクスペリエンス製品はPC版『剣の街の異邦人』のみクリアしている。

それ以後、エクスペリエンス製品のゲームをプレイする機会がなかったが、『黄泉ヲ裂ク華』は世界観が好みだったためXbox One版発売時から注目していた。
PS4版が発売されてプレイした所、予想通りDRPG好きには楽しめるゲームになっていると思う。

黄泉ヲ裂ク華は1979年、昭和54年の黄泉が出現したもう一つの東京が舞台となる。 黄泉に「出勤」し希少な資源を掘削するため迷宮を彷徨う地下探行士(アンダーノーツ)たち。
これまでのエクスペリエンスのゲームに比べても『黄泉ヲ裂ク華』ではシステムや世界観がライト過ぎず、丁度良い落とし所に収まった感じだ。

黄泉と地下探行士という設定でゲームとして成功するのは保証された。後は”Team Muramasa”がこれまで培ってきたノウハウが注ぎ込まれるだけだった。

詳細は避けるが、ゲーム本編ではこの設定が十分活かされないままストーリー進行するのが個人的には残念だった。
続編が作られるとしたら「黄泉ヲ裂ク華の前日譚」である黄泉出現後に黄泉景気に湧く世界での地下探行士をプレイしたい。

突如東京に出現した謎の構造体「黄泉」

零細企業カサンドラ社は地下探行士となる若者を募集

黄泉駅のホームに降り立つ武装した地下探行士たち

黄泉内部へと向かうチノワゲート

キャンプで佇む謎の少女

黄泉で遭遇するイベントの数々






■オーソドックスなゲームシステムと快適なプレイ環境
ゲームシステムとしてはオーソドックスでクラシカルなターンバトル制の3DダンジョンRPG。
プレイアビリティは非常に快適で、マップのある地点を指定するだけでそこまで移動してくれるフルオートパイロットで迷宮内を目標場所まで高速移動する。
道中はファストトラベルではなく「移動」になるため、エンカウントする可能性もあり油断は出来ない。

戦闘はスイッチブーストという一種のパーティースキルがあり、毎戦闘で使えるためMP節約等に便利。
ただスイッチブーストを使いすぎると何かしらリスクがある等の設定を入れても面白かったかもしれない。
戦闘では高速戦闘を選択すれば、ログが高速で流れるため時間短縮が出来る。が、高速戦闘に慣れると毎回選ぶのは面倒なので、オプションで「高速戦闘」を設定出来ればと思う。

戦闘はオーソドックスなターンバトル 右上のアイコンは職能による常時バフ


マップは自動表示されるが不定形で複雑な形状をしている迷宮が縦横に広がっている。
上下にも階層があり梯子で繋がっているため、コアユーザーにも攻略し甲斐のあるものになっている。(※一応、迷宮の1区画(ブロック)の大きさは30×30となっている。)

■ダンジョンビルドは移動経路を自分で作る手段だがパズル的な要素はない
大きな特徴の一つが迷宮にプレイヤー自身が手を入れる「ダンジョンビルド」だ。
迷宮の内部は「黄泉の花」で扉・梯子・架け橋を作って移動経路を自分で増やすことが出来る。
他にも魔物の花を大量に仕掛けてモンスターハウスを作りレベルアップとハクスラ専用のダンジョンにする事も可能だ。

黄泉の中で「黄泉の花」を使うと扉や梯子、架け橋等が建設出来る

行き止まりの壁にトビラの花を使う

扉が出来て先に進めるようになった

ダンジョンビルドにはギミック同士を組み合わせるようなパズル的な要素はなく、通路や座標同士のショートカットを作るだけなので、結局は壁や架け橋があるかどうか総当りになるのが残念な点だ。
特に終盤のダンジョンでは大量の隠し扉や架け橋を開通する事が必要になるため、黄泉族(モンスター)を倒して物資を得る→拠点に戻る→融合炉で物資から花力を抽出→黄泉の花を作る→ダンジョンに扉や架け橋を開通するの繰り返しになり、作業的なプレイになってくる。

黄泉には黄泉族という多数のモンスターが徘徊する 稀に人間と遭遇する事も




■希少な国産DRPGタイトルとして続編も期待
DS・3DSの人気シリーズ『世界樹の迷宮』が終了した2020年の現在では、有力な国産DRPGタイトルはアトラス『真・女神転生』シリーズや日本一ソフトウェア『地下迷宮と魔女ノ旅団』が挙げられるものの、真・女神転生Vは2021年発売が決定されたものの、まだどのようなゲーム形式となるのか詳細は不明だ。
(日本一ソフトウェアの最新DRPG『ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団』はPS4等で2020年11月26日発売。)
コンシューマソフト市場では新作の国産DRPGが希少な状況で、この『黄泉ヲ裂ク華』では基本を抑えたシステム・高いプレイアビリティ・作り込んだ世界観と設定・重厚さを目指したストーリー展開等から水準以上の出来で、今後のシリーズ化と続編製作にも期待がかかるゲームと言えると思う。

なお『黄泉ヲ裂ク華』はエクスペリエンス製作『剣の街の異邦人』と世界観的には繋がっているが、未プレイでも本編は問題なくプレイが可能だ。『剣の街の異邦人』をプレイ済みであれば元ネタが分かってより楽しめるだろう。

PS4/Switch『黄泉ヲ裂ク華』 PV 第三弾

その他の評価点

高評価の項目 低評価の項目
  • 黄泉という巨大構造物から資源を得るために迷宮を探索する「地下探行士」という世界設定が面白い。
  • 迷宮内部に自分で経路を作って攻略を進める画期的な「ダンジョンビルド」。
  • そこはかとない昭和の懐かしさとディストピアな世界感溢れるダークさの中に、ブラックユーモアがスパイスとして散りばめられている。
  • 骨太な世界設定と練り込まれたストーリー。黄泉発生で如何に日本がディストピアとなったかが、世界観を説明する用語集や黄泉ヌードルに付いてくるカードの説明で皮肉交じりに説明されている。
  • 迷宮内では移動地点を示すだけで移動が完了するオートパイロット機能や戦闘時に選べる高速戦闘でプレイが省力化されている。
  • 職能(スキル)ポイントは何度でも振り直しが可能。転職により能力値も何度でも変更が可能。
  • 本編のみでクリア後シナリオを外した少し安いバージョンの「お手軽版」も発売されているので、フルプライスでも購入し易い価格設定。※「お手軽版」に「やり込みDLC」を追加購入する事でパッケージ版と同じ内容になる。
  • キャラクターシートに特記事項を入力するのは本編プレイには全く影響はしないが脳内設定を補完するフォーマットとして面白い。
  • 世界観のフォローのため、細かい設定や雰囲気作りに力が入っている。拠点で流れている「黄泉ラジオ」はずっと聞いてしまう。迷宮を探索中にラジオの市況のようにアルゲンの価格放送が流れてくるのは面白い。世界観を作り込んでいるからこそ、こうしたフレーバー要素も活きている。ラジオのチャンネルを自分で変えることが出来れば更に良かった。
  • どのエリアから攻略を進めてもいいフリー攻略制になっている。
  • 会話や戦闘でログの履歴が残っているので、後から読み返せるのは便利。
  • ゲーム内ヘルプやWEBマニュアルが充実している。
  • 事前公開イラストから「探行士専用駅に降り立ち、そこからダンジョンに出発する」というイメージを持ってしまう人もいるかもしれないが、実際には黄泉内部に閉じ込められた状態からスタートし、地上と行き来するのはイベント的な扱いに留まる。このゲーム最大の魅力である設定の「地下資源を採掘する地下探行士」としてのプレイが楽しみだったが、本編のストーリー進行の割合が大きく地下探行士としての生活を楽しめないのが残念だった。
  • パッケージイラストから想起されるように、カサンドラ社社長が黄泉での一攫千金を盛んに謳うが、実際にプレイヤーが目指すのは「黄泉からの脱出」であるため違和感を抱いてしまう。(EDを迎えると分かるが、一応カサンドラ社社長が採掘資源で大金を稼ぐ事を煽るのはそれなりに理由がある。)
  • キャラクター作成時にキャラの立ち絵が選べるが、数が少ない上標準的なポートレートが少ない。また職業毎に数種類しか立ち絵パターンがない。同じ立ち絵からは8パターン程度細かい違い(帽子をしている・していない等)が選べるが、僅かな違いしかない。
  • アイテムや装備品のグラフィックがない。
  • 説明文に若干表記揺れがある。公式サイトでは「地下探鉱士」公式動画やゲーム内では「地下探行士」となっている。
  • 終盤のNPCの台詞で脱字箇所がある。(「けどあの男なら本当にやりかません。」)※2020/11/7時点 但し、全体的な文章量からするとメッセージや台詞に誤字は殆どないレベルである。
  • ストーリーに関わる登場人物が少ない。
  • 文章量は充実しているが演出面がやや弱く、グラフィックはあっても一枚絵かキャラクター絵のみでストーリーが進行する。またキャラクターボイスはOP/ED時の主人公モノローグしかない。(歌や悲鳴は除く。)
  • 街や店が一切なく全ての装備はキャンプ(融合炉)で作る事が出来るため味気ない。
  • 2020年の最新DRPGとしては戦闘システムがシンプル過ぎる。また各職の職能(スキル)数が全体的に少ない。難易度はマイルドで出てくる敵も然程強くないため、キャラクタービルドを試行錯誤して攻略したいというスタイルのプレイヤーには物足りない。
  • 戦闘中に敵のデバフで隊列が乱される事が多いが、メニュー機能で「隊列移動」する事は出来ない。(アイテムか職能(スキル)でのみ隊列復帰が可能。)
  • 戦闘不能となったメンバーを復帰させる職能(スキル)がない。希少なアイテムでしか戦闘不能者を復帰させる事が出来ない。
  • 開始時に主人公の男性ボイスナレーションが流れるが、作成主人公は性別が選べるため少し違和感がある。主人公を作成後に選んだ性別によって男女何れかのボイスが流れる方が良かったのではないか。
  • 融合炉での花力・アルゲン抽出の際に大量の資源を選択するのに個別に選ばないといけないので操作が面倒だった。世界樹の迷宮シリーズでの売買のようにボタンを押したまま複数選択が出来た方が良かった。
  • CEROレーティングで17才以上が対象だが、ゲーム開始後にゴア表現(欠損描写)があるので注意が必要。

クリアスタッツ

ストーリークリア時のパーティースタッツを掲載します。
※ネタバレを避けたい方は以後の参照をご注意下さい。

コンセプト

ストーリーボスクリア時パーティー
闘術工・斬術工・斬術工・忍術工・聖術工・魔術工

クリア時点での各職の印象
戦術工:重装備から後衛用レンジ武器まで武装を幅広く使える事が最大の利点。反面、戦術工や防術工用の重装備は命中が下がるため、ボス戦で攻撃が当たり辛いこのゲームでは採用し辛い。

防術工:防御を重視するとボス戦等ではHPを超回復される事が多いため、軽装でも攻撃を重視したほうが良いこのゲームでは採用し辛い。

闘術工:「集中」→「鉄山撃」が序盤は強力なダメージソースになる。「牙砕き」が敵のダメージを落とすもののダメージが低く、後半はやや微妙か。武装の選択が狭いのが難点。

斬術工:防御はやや薄いがHP回復しながらダメージを与える「血吸い斬り」が強力で生存率が高い。シリーズ伝統でカタナ系の武器が強く強力な前衛になる。

忍術工:前衛・後衛どちらでも攻撃やサポート役として立ち回れる。「幻影」で防御役としても使える。「隠密」状態にならないと行動が制限される。色々出来る反面、器用貧乏になり易い。

猟術工:後衛レンジャータイプ。全く使わず使用感が不明だが、公式説明では火力は他職に劣る。総合猟術工で「厄落とし」「武器エナジー」「対強化ブレイク」等の便利系職能が使えるのは利点。

聖術工:回復役としてほぼ必須。「エナジーバリア」で防御壁が3回張れるので防御役としても強い。

魔術工:序盤は微妙だが後半は「ペンタキネシス」で強力なダメージソースになる。総合魔術工で「号令の口笛」「鷹の目」「異術ブレイク」「強化ブレイク」等の便利系職能も使用可能。

『黄泉ヲ裂ク華』では転職は制限なく自由に行えるので、気に入らなければ色々試す事が出来る。

各職業は昇進させると「専門職」と「総合職」に分かれて強力なスキルが解放されるものの、昇進には「能力向上アルゲン」が必要となる。能力向上アルゲンは貴重品なので良く考えて昇進させたい。
(オートセーブのため昇進させた後で昇進前のデータに戻るのは基本的には不可能。)
ストーリー序盤は昇進せず、ストーリー中盤以降にそれまでの使用感から昇進させる職業を選んだ方がいいだろう。

筆者が選んだのは上記のパーティーの通りで全て昇進させている。
序盤は戦術工を使っていたが、装備の関係で命中が下がるため攻撃が中々当たらず、ボス戦で役に立たない印象だったため、斬術工に転職させている。
斬術工が非常に強いと思うので前衛は3人斬術工でもいいくらいだ。
忍術工の代わりに猟術工を入れて便利系職能を使ったほうがバランスがいいかもしれない。

職能(スキル)については「一振り」より「全振り」した方が高い威力が出る。
「職能点のタマ」は多数ドロップするので、ダメージ源となる職能には惜しまずに最大まで振りたい。

キャラクタースタッツ

忍術工/アスリート/男(主人公)




闘術工/ヤングマン/女




斬術工/ヤングマン/女




斬術工/ヤングマン/女




聖術工/クリエイティブ/女




魔術工/ホワイトカラー/女



戦歴・収集率

戦歴・収集率

ゲームレビューカテゴリの最新記事